
こんにちは、いかがお過ごしでしょうか?
商いをしてますといろんな環境変化を体験します。
ここ2〜3年のインフレ圧力がまさに直近の変化だと思います。
その対応法を今日は取り上げてみます。
ここ5年以内の出来事は商品等の需要と供給に大きな変動をもた
らしました。
コロナショックの時もサプライチェーンが影響を受け、発生後の
「物が過剰」な状況から一転回復後の「物不足」の変化の”差”が
大きかったです。
ウクライナ戦争後の混乱は、同じく流通サプライチェーンに影響
がありコスト上昇の圧力が生まれました。と同時に紛争国が資源
供給国だった事もあり、コストの根っこから上昇する流れになり
ました。
最近のトランプ関税でも駆け込み需要とその反動減が起きてます。
しかし、荷物を運ぶ船会社からすると急な変化は望んでません。
対応出来ないからで、その歪みがコスト増になってきます。
船積運賃上昇は輸入する物に等しくコストを要求します。そしてそ
れは消費者購入価格に転嫁されます。「安定」した状況が続かない
とコスト低下は望めないわけです。
”戦争状態”は解決まで時間がかかる事、地政学的に大国の抑えが緩
むと玉突き的に世界中で紛争が生まれやすくなってしまいます。大
国同士が強い時代ならそれなりに均衡しますが、そう言う意味で冷
戦状態とは違う不安定さが今の世界情勢にはあります。
世界は安定とは真逆の崩れやすい状況ですので、このインフレ状態
も中期的に常態化しそうです。そこが商売において認識の出発点に
なります。
需要と供給”以外”の問題で悩ましいのは、景気後退期とこのインフ
レが同時並走する可能性です。この先スタグフレーションが起きる
のでは?と社会が考えてるからです。
景気後退が良くないのは企業が賃金を増やさないからで、賃金が増
えないとインフレで値上がりする商品がより”高額”に見えてしまい、
消費が衰えてしまいます。
現在と今後の景気の流れは
インフレ上昇→金利上昇→株価下落→
→景気後退→インフレ鈍化→中央銀行利下げ→株価上昇
と循環します
成長期であれば景気後退は6ヶ月程度で調整され、再び景気上昇に
向かいますが、需要がない中でインフレが起こるスタグフレーショ
ンの場合は解消に時間がもっともっと掛かります。
目の前のお客様のことを考えれば、「給料が増えてないなら私の店
は値ごろ価格を提案します」と言う方もいるでしょう。しかし、そ
の価格帯をどれほどの量販売すれば従業員の給与や上昇する諸経費
を賄えるのでしょうか?人口減の社会で。
皆様のご商売は「客数✖️客単価」です。インフレで自然と客単価は
上がっています。その状態で客数もついて来れば良い状態です。
客数が上がるには給与が上がっていて、消費者の将来への見通しも
明るく消費に前向きであれば購買支出が上昇しても「客数」は維持
もしくはのびるでしょう。
現在進行の未来がそうは見えない以上、簡単な値下げやキャンペーン
では需要の回復には繋がりにくい事を意識した方が良いでしょう。
インフレの環境要因が世界中で循環的に起こっていることに派生し
てることを考えると、我々がコントロールできる事ではありません。
一方で、景気循環は政府の施策次第で和らげることや、未来の明るさ
上手に見せる事で国民のやる気を引っ張り上げることも可能です。ま
た為替が円高環境下?円安環境になるのか?でも変わってきますが、
これらも政府に任せるしかありません。
私たちは「経済がまるで発展しない」と言う”時とお金”が無駄になる、
デフレ時代も商売してきました。その真逆の位置に私たちが置かれ
たとして考えれば、何かしらの対応法も探し出せるかもしれません。
百均やディスカウントストアなどのデフレ対応企業も時代のニーズを
元に発展してきました。そう言う意味で我々小売業は時代対応業です
から、生き残るには少しばかり知恵を働かる必要はありそうです。
と言う前置きの上で、地方専門店様及び中小メーカーさん向けのイン
フレ時代の戦略をまとめてみたいと思います。
Contents
価格が動く「時価」の感覚
物の価値がわかりにくい
少し前の話になりますが、キャベツや米が高いとニュースになりま
した。消費者は肌感覚で高いと思うと手が出ません。
以前の感覚で、「キャベツは100円、米は高くても3,000円」と記
憶が残ってますから、それと比べる限り高いと言う思いは消えない
でしょう。
インフレの特徴として物としては同じ物が刻々と価格が変化する事
があります。長らくデフレ時代にはなかった事ですから、感覚的に
慣れてません。そうしても過去の価格と比べてしまいます。
そう言う意味でインフレ時代の価格戦略を考える場合は少し丁寧に”
(デフレ時代の)肌感覚”に寄り添う姿勢を見せ事が大事だと思いま
す。
後ほど例にあげる外食産業などはその点が優れた対応をされていま
すが、インフレ価格に慣れてない消費者を置き去りにしないという
事です。
インフレについて来れない消費者を置き去りにすると客数が割れて
きます。インフレ時代のお客様は「物の価値がわかりにくい」と悩
まれてるわけですから、ゆっくりと希望の価格帯に誘導する姿勢が
求められます。
分かりやすい設定にする
新価格の価値を分かりやすくするという点で参考にしたいのは、昭
和のインフレから平成のデフレになった時代の成功例です。
昭和初期のインフレ時代で高嶺の花だったのは航空機代でした。
海外旅行は高い物だった時代は「なるほどザ・ワールド」の様な海
外をテーマにしたTV番組も多く、多くの庶民からすると海外に自由
に行く事は憧れでした。
その当時、旅行代理店で急成長したのはH・I・Sでした。ホテルと
チケット代の卸価格をオープンにして閑散期には安い理由を明かし
、価格が変動する(ダイナミック・プライシング)を普及しました。
代理店は仕入れ価格に一定のマージンを載せますから、説得力のあ
る価格設定で儲けも担保されてるので営業的に有利でした。
(オープン価格に一定の手数料を乗せる明朗性では中古車のガリバー
も成功例です)
そういう仕組みに合わせた低い本部コストで既存の代理店に優って
いたのに加えて、もう一つの収益はキャンセル代でした。
より安くを望む客層のために早期予約を受け付けます。早期は格別
の安さが魅力ですが、何かしらの事情で無駄になる事は想像に難く
ないと思いますが、そのキャンセル代はまるまる純利益になります。
この様に、その時代に生まれるビジネスモデルは短所を長所に変え
て登場してきます。前の時代に商売の起点があり、そこで社会が変
わる場合が対応し難いのです。
その理由は、消費者とともに売り手も”前”の時代の感覚に囚われて
るからです。それがデフレからインフレチェンジを難しくしてる原
因だと思います。
そう言う意味では、インフレ対応をあまり難しく考えずに、顧客の
慣れを待ちつつ、”ご理解を得やすい”プレゼンテーションを工夫し
ていけば良いと思います。
価格帯の軸は変わらない
私たちのお店の松・竹・梅
私はよく価格帯の説明に松竹梅を用いますが、理由は
・古来、商売によく使われている、馴染みやすさ
・人間は大まかに3つぐらいの情報しか理解できない
・3割の価格差を3段階設けることで、価値の差を示しやすい
・梅が集客のエントリーライン、松への憧れ背伸びで客単価向上、
竹がレギュラーの価値(セレクト感覚)を表す物だからです。
地方専門店様の場合、資本力が乏しいこともあり、戦うフィールド
を小さくしがちです。
価格帯が明確に分かれてないので、似たり寄ったりのまんじゅう型
MDに見えます。お客様から見てどれが餡子か分からないオチもつき
ます。
梅はお店のベーシックを代表する価格帯ですから、納得してするする
と売れなければいけません。竹はお店の独自性を表していきますから
梅に+3割で選択の範囲が広がります。
松は梅の2倍の価格で3倍の価値を感じる物です。お店の顔になります。
背伸びする価格ですが、期待を裏切りません。
お寿司でいえば
梅:玉子にイカ
竹:甘エビに穴子
松:大トロにいくら
ビールならば
梅:発泡酒 原料誰も気にしてない
竹:ザ・ビール 麦100%
松:プレミアム 特定工場、製法、特徴
といろんな業界(ホテル・コーヒーチェーン・車)で同じような
棲み分けができていると思います。
今までもこういう価格MDを組む事は可能でしたが、今の問題はイ
ンフレで特に梅と竹が同じ価格帯を維持できない事にあります。
それぞれの仕入れ先の事情でブランドの価格は変化していきますの
で、私たちは今の時代にあった様に編集しなければいけません。
それがインフレ時代の宿題だと思います。
松竹梅では松がキーを握る
先ほどお寿司とビールの例を示しましたが物の魅力を一番伝える
力があるのは「松」の価格帯になります。
パソコンや、ベンツの最上位クラスがCMには使われると思います。
その会社やブランドの哲学を表す商品が最上位クラスであるのが、
消費者へのアピールに用いられると思います。
特にインフレ時は「この商品ならこれぐらいの価格は認めよう」と
言われるスペシャル感が必要になります。
私たちも日常生活でレギュラーチェーンより少し上の価格帯のサービ
スを選ぶときは、そういう差別化が出来ているものを選んでいません
でしょうか?
外食産業ではどう対応しているか?
インフレ対応できているミスド
このインフレ下で最高益を出しているのがミスドにマックがあり
ます。
決算が過去最高益をだしてます、と言うことは
客単価✖️客数=売上 の内、インフレ値上げでで客単価は自然増
するとして、客数が割れてないから売上が出せていると言えます。
ミスドの定番オールドファッションは100円の時代もありましたが
今や175円、200円以下が少ない。
一方人気のコラボを連発しており、キャラクターのポケモンなど、
また人気パテシェとのコラボもしている。これらが300円台で、珍
しいという理由でお持ち帰りでギフトにも使われる。
この店頭の商品価格を読み解くと
松の価格帯:コラボやタイアップで人気商品化に成功している
竹の価格帯:レギュラー商品を含め値上げさせている
梅の価格帯:若干の定番商品は値上げ幅を抑えている
会社の狙いとしてはメニュー中心の竹商品の値上げは出来ている
一方、常連顧客が愛する定番の値上げは抑えて”常連”の気持ちを
慮っている。
「今まで支えて頂いた皆様の気持ちを忘れてませんよ」と言った
かどうかはわかりませんが、価格設定で誠意を見せながらあくま
で少しずつです。一方、コラボは堂々と値付けすることができる。
ディズニーランドもサービス業としての値上げを断行してますが、
値上げ方針(年間パスポート廃止を含め)で若年層が来る手段を
与えない様にしたことが今になって影響が出てきています。
私たちアパレル業界隈もアイデアを生かすとすればディズニー路線
で一気に客単価を上げる戦略を取るのか?ミスドのように梅価格を
支えてくれる顧客をいかに離反させないかを考えるかのどちらかに
なるでしょう。
セレクトショップでも決算を見ていると、このインフレ化でも数字
を落としてない好調企業があります。
店内を見て回ると一番ベーシックな商材は安く感じます。Tシャツで
7000円スタートと思いきや5000円台で買えたりします。中の人に
聞かないと意図的かはわかりませんが東南アジアシフトで梅価格帯を
維持している様に見受けます。
地方専門店は商品調達が仕入れに頼ってるので、価格戦略はメーカー
サイドの値段設定に左右されます。ですのでじわじわと値上がりを
していますが、専門店側はその認識は低いと感じます。
ですので、2シーズンもすると都心セレクトと地方専門店の価格帯
特に梅では2〜3割の価格差が出来ていると思います。これは当然
消費者は気付いているでしょう。
松竹梅パッケージを宣伝する
順番は松の開発それから梅の落ちこぼれ防止、それから宣伝
この3月から4月にかけて値上げをする飲食企業は多いのですが、マッ
ク(マクド)もその一つです。
マックが最高業績を上げている牽引役は松価格のサムライマックです
。この松の商品を開発できたことが大きいです。ロッテリアには匠バ
ーガーがある様に、トップの価格帯はビジュアル的に惹きつける破壊
力がいるし、やりすぎない様にまとまっていますね。
松の価格は理解できる、それに伴い全体の価格を引き上げると、常
連層は頼める品数が減ってしまい、来店頻度も下げてしまいます。
それを引き止める梅のキャンペーンがポテトの増量もしくは500円ラ
ンチセットになります。
これを客数が落ちると見込まれる寸前にキャンペーンに組み込みます。
マックもミスドもまずは松に値する商品開発を続けています。我々
の店で同様の努力を続けてますでしょうか?「あのお店には丸丸が
ある」と認識されてるでしょうか?
その辺りに気付くとインフレ対策はしやすいのではないでしょうか?
コラボでも良し、素材にこだわってもよし(ストーリーがあれば)で
す。
松がインフレ時代の顔になる
ユニクロが+Jや+Cで名デザイナーと組むのは松になるでしょう。
企業の考え方が出ているそういう牽引役がインフレの松。
デフレ時代の戦略性が現れていたのが梅の価格帯でした。そこから
反転してのインフレ時代には松商品の際立ち具合がそのブランドの
特性を表す様になるでしょう。
そのブランドを一言で表すとすれば。。ですと、マックならば侍マ
ックの様に、一目見てこれならお金を出しても良いと言わせる物で
す。
外食でも一番インパクトのある商品を打ち出していると思います。
特盛の海鮮丼や黒毛和牛の部位盛り合わせとか、絶対食べたいと言
物が3千円なり5千円なり多少高くても折り合いが付くなら良い店
という認知が得られる。
我々アパレル業界なので「大盛り」や「食べ放題」という技は使え
ませんがコラボや限定、予約、パーソナルオーダーなどは使いやす
いと思います。
外食でも力の入った商品開発する時代なので、名前を借りるだけの
コラボでは見透かされてしまうのは間違いないです。
そういう自店だけと言える商材をいかに仕入れられるかが、砕氷船の
先端が氷を破る様にのインフレ時代を勝ち抜く秘訣だと思います。
デフレ時代の百均が、安くて尚且つ商品開発が矢継ぎ早だった様に、
インフレ時代も連続した開発が必要になると思います。
先のミスドでも松のシーズン企画と特別企画は別のように組み合わせ
で登場させます。つまり開発は並列で行ってるのです。
そしてそれを訴えるのが最重要と思う
アパレルでもモチベーションとイベントをカレンダーで管理してると
思いますが、そこに合わせた商品投入をしていく必要があります。
さりげなく置いていつか気付いてくれる様ではイベント感や認知のス
ピードは上がりません。ですので、そこはSNSとの連携が大事になり
ます。
松の商品開発が商品視点の鮮度キャンペーンとすれば
営業視点:お得キャンペーン
顧客視点:ファン向けノベルティ・囲い込み
合わせて3つの訴求をしていく必要があります。
限られた社内のリソースで全てを追うのは無理があるかもしれません
が、まずは全体の理想像を描き、そこからステップバックさせながら
何をしていくかを決めるといいでしょう。
バックキャスティング方式をお勧めします。
バックキャスティング方というのはまずゴール(理想像)を決めてから
その一つ手前で何をするかと掘り下げていく方法を言います。
ステップ1から2へと進んでいくの積み上げ式に対して、先に大きな絵
を共有してそのためには何をすれば良いかと考えていくことに特徴があり
ます。
ということで
・インフレ時代はデフレ時代の逆をする
・松商材開発が鍵になる
・そのスピードを上げていく
・そのことを知らしめていく
というのが私が考えるインフレ対応です。
ご参考まで、また次回