35:「避けがたい暖冬時代を生き抜く」

こんにちは、いかがお過ごしでしょうか?

 

2016年の暖冬の悪夢再び。。という2019年AWの結果でしょうか?店頭では70%オフも目立ちます。

ほとんどファミリーセールの価格ですね。とはいえ2016年は10月後半から諦め見切りが始まったひ

どい年だった記憶があります。たった3年で同じような事態になると「冬」を信じられない気持ちに

なります。

 

「商売は景気と天気のせいにするな」という金言がありますが、流石にこの冬の暖かさを考えると、

(何せ手袋とマフラーを一度も使ってません。高血圧のせいじゃないかwwという意見もありますが)

無視出来ない感じです。

 

Contents

暖冬の傾向を見てみると

2005年から東京地区の気温データーを見てみました。夏で一番熱くなった「最高気温」と、9月最終

週と10月1週の「最低気温」に注目してみました。ZARAの店頭を見てましても、9月のシルバーウイ

ークで先行投入したAWのトレンド商品を一旦整理して、10月からのボリューム商材に入れ替えます。

顧客モチベーションにも大事なタイミングです。

 

ですので10月に入っても気温が高止まりしていると、または一旦下がったのがまた振り戻されるのは

悪影響が出ます。

2005年 最高33.8 9末ー10頭 18.4 18.6
2006年 最高32.4 9末ー10頭 18.5 17.7
2007年 最高34.2 9末ー10頭 19.7 18.0
2008年 最高33.0 9末ー10頭 16.6 17.6
2009年 最高32.1 9末ー10頭 19.4 16.4
2010年 最高35.3 9末ー10頭 17.7 18.2
2011年 最高34.3 9末ー10頭 18.1 16.1
2012年 最高34.2 9末ー10頭 19.7 20.2
2013年 最高34.9 9末ー10頭 18.6 21.5
2014年 最高33.4 9末ー10頭 20.0 17.4
2015年 最高35.0 9末ー10頭 17.9 14.9
2016年 最高33.0 9末ー10頭 20.8 19.8
2017年 最高33.0 9末ー10頭 18.1 16.4
2018年 最高34.9 9末ー10頭 16.9 19.3
2019年 最高35.2 9末ー10頭 20.7 17.7
最高気温というのは「今年の夏は暑かったね」という記憶には残りますが、秋に向けて順調に気温
が下がれば問題はありません。2010年、2011年はそのパターンです。問題は最低気温と見ています。
厳しいのは2012年や2013年、10月に入ってまた気温が上がってくるパターンです。秋に向けて気
温は上下しながら下がるのですが、9末〜10頭以外の夏後半全て最低気温が高かったのが2016年
でした。
9末〜10頭が大切なのは人は新陳代謝の変化で気温が低下する場合は早めに備えようと反応します。
気温が上がる春の場合は新陳代謝の切り替えは遅れ気味ですが、秋冬は早く反応するので気温が低下
すれば先買いを見込めるので有利になるからです。
2016年は秋物が全滅したので、資金繰り的に冬物をなし崩し的に換金セールせざるを得なかった年で
、セールの連鎖反応で顧客側がまだ安くなると購入を手控えたことでより厳しくなりました。
結果的に翌年5月以降に倒産が増えた悪夢の年でした。
2005年以前のデーターは少ないのですが、最高気温の高い年は過去にもありますが、10月初旬で
の気温の高止まりは2010年以降は常態化しつつある気がします。もっとも2018年は35度近い時
期にカナダグースが完売しているのですから、気温がどこまでの消費意欲の削いでいるのかは推測
の域を出ません。
つまり買う気があれば高温は関係無いとまでは言いませんが、主犯とまでは言えないのではないか
と思います。では、どういう時に冬物の値崩れが起きるのでしょうか?それは買う気が起こらず、
また暖冬で服を見にいく気も起きない時ではないでしょうか?

株価理論

気温も主役ではないにしろ助演男優賞ぐらいの役割を果たしているのではないか思います。アパレ

ル産業が水ものと言われるのは天候による不安定さもありますが、ピークのタイミングで一転して

大崩れすることがあります。私が面白いと思うのはその崩れ方が株価と似ているという話です。

 

つまり、トレンチという人気がある株、カナダグースが人気株だとすれば、人気で株価が上昇してど

こかで崩れる、株であればだいたい大崩れします。仮の需要で大きく注文しているとどこかでそんな

需要はなかったことが判明し、仮想が大崩れする現象です。

 

以前は、ストリートブランドや特定の会社に留まる現象でしたが、ここに来て業界の同質化が進み、

同じタイミングで大崩れするのが新たな事象のようです。19年AWではダウン株大崩れというとこで

しょう。

 

大まかなトレンドサイクルを3年と見れば3年周期で、同じような商材が店頭で山積みになる(最初

にヒットさせた会社は積み増しし、競合も話を聞いて相乗りしてくる)。そのように飽和した段階

で助演男優の気温が印象深い演技をすると、顧客の買う気が弾けてしまうという株価的ストーリー

です。

 

その「売れてる話」を四方八方にばら撒くのは商社になります、7〜8社の商社に何千ものメーカー

がぶら下がってますから、誰が悪いでもなくそうのように業界構造的に同質化していく構図になってい

ます。足元で個性的な店や商材が好調と聞くのも、そういう同質化による雪崩現象に巻き込まれてない

ことの証明なのかもしれません。

 

ブルウイップ効果

仮の需要が積み上がって注文が入り工場の増産体制を整えたところ、実はそんなに人気があったわけ

では無いと後でわかり在庫の山になるという現象は古くから日用品や食品で事例があり、ブルウイッ

プ効果または鞭(ムチ)理論と呼ばれます。

 

雄牛が角で突き上げる様子をブルウイップといい、ムチの例えは、ムチをしならせる場合は手首を

小さく鋭く動かすだけで鞭の先端は大きくしなる事を指してます。小さな需要が噂を聞いた周囲の

同調により連鎖反応を起こし架空の需要は一人歩きして膨らんでいく現象を表しています。

 

最近はSNSがありますから、とあるユーチューバーから口コミで広がったり、M1の漫才でコーン

フレークが売り切れたりします。これらの現象が続くと感じた小売が全国が注文を思い込み分も加

わり過剰に発注し、それを受けた工場が人気が継続してあると錯覚するとラインを増設して大量供

給する構図です。最後に思い込みがはじけて在庫が残る悲劇です。

 

実際の例で行くと、サントリーのオランジーナやガリガリ君のコーンポタージュ味などの人気商品

が発売時に初速がよく、そこに特定のコンビニが発注を多くして在庫の確保を急いだ時に供給不足

の騒動になりました。よく生産調整のため一旦棚から商品を引き上げるという事をします。これは

このブルウイップ効果を鎮静化させる意味があります。

 

ところがアパレル産業ではブルウイップなど考えてませんし、バズればラッキーと受け止めます。自

分の店の商材が他社と被っているという実感を持っていません。消費者はECモールができた事で館

を歩き回る事なく検索機能で類似品の比較が簡単になってますので、競争力のある上位20%は売れて

もそれ以下は見向きもされない状況も出てきます。

 

こう言う検索比較できる時代に、2000年前後に流行ったQC(クイックレスポンス)追加を2週間

で投入する手法は在庫調整の役に立たないと言われています。自分が控えめに作って売り切れたとして

も他所に似たものがあるからです。

 

このようにアパレル側に供給過剰の認識が薄いことが、株価のような大崩れを暖冬のタイミングで繰り

返してるというのが実態では無いかと推測します。商社情報主導のヒットの被りが大体3年周期、暖冬も

3年周期で両者の悪影響が重なったのが2016年、2019年ショックの背景にあるのではないかと個人的に

見ています。

 

トレンドバブルに巻き込まれないようにするには

 

セールをしない

究極の対策はこれです。定番品を主体にして持ち越しても良いようにする。セール時期は休んでス

キーに行く、温泉に行くというお店があります。生き方として店の奴隷にならない、自分の人生を

優先するのだそうです。商売を諦める分、得るものがあると言う考え方です。

 

そういうお店の特徴は固定費が安い、ご夫婦とアルバイト、また山奥立地や古民家改装など家賃が安

い事です。また回転の速い割り切った(韓国直輸入)商材展開店舗と、セールをしない本店に分けて

いる方もいらっしゃいます。

 

ロングセラー商材

以前お話ししたように、雑貨主体のお店はもうけが薄い(仕入れ値が高い)のでロングセラー主体

のMDを常に考えています。ロングセラーを主体に足の早いトレンド品をSNSで細かく紹介して消化

していく事で鮮度のバランスをとります(ウイメンズは)。

 

ロングセラーが狙えてかつ原価が安いのは化粧品です。化粧品展に行けば工場出しで30%ぐらいで

OEM注文できます。ロットは大きくないです。ロットが大きいのはパッケージです。化粧品で難し

いのはブランドとしてのイメージを保つ事です。持続コスト(TVCMなど)が勝負の分かれ目にな

ってきます。

 

いわゆる素人でも扱えるフルセットになっている商材だと韓国ブースで入手できます。この場合

オーダーミニマム(多分記憶では50万ぐらい。。?)が条件になります。アパレルとは相性は良

いと思うので取り扱いは大手でも増えてくると予想します。(洋服屋というコンセプトから貴方

をいつまでも美しくさせると言うトータルコンセプトに変えるとか)

 

月指数の平準化

1年の売り上げを100%とし、12で割ると、8.3%になります。毎月同じ売り上げならば月指数は

8.3%という事になります。いわゆる好調と言われるお店の特徴は月指数のブレが少ない事です。

一年を通して満遍なく需要がある、毎月顧客が何かないかと来店する状況と言えます。

 

アパレルの場合の月指数のブレは、まずシーズンの違い。春夏より秋冬が高い、大手ほど極端に

秋冬が高い(仕込める資金力があるから)思います。それとプロパー期が低く、セール期が高い。

楽天ポイントだクーポンだ!とシーズン頭から10%以上お得感を出している今、「定価は参考価

格です」と言う時代なのでセールとプロパーを分けづらいですが、利益が出せる店はセール前の

月指数が弱くない(サイズや色がなくなる前に買いたい顧客がいる)。

 

自店の月指数を見て偏りがあれば調整します。過度なセールをしてると年間4カ月店を開けてい

ればよく、後は閉店して副業した方が良いような店もあります。月指数を見るとシーズンの端境期

が大事なことがわかります、固定費は等しく掛かっているからです。

 

となると、シーズンの端境期に着れる、カットやデニムの商材は大事だと言うことがわかります。

また端境期ならではの集客キャンペーンも半年前から企画しておくべきです。今月の売り上げが悪い

のは半年前に何も行動・計画しなかったからだと言えます。月指数を見て年間で打ち手を考えまし

ょう。キャンペーンは旧暦の24節気を使うと区切りが出て良いかもしれません。

 

前年の売上より低い目標にし利益目標を上げる

毎年、機械的に前年比でUPさせようとすると上記の3年周期の罠に罹りやすくなります。その反面

在庫切れを常態化させると売り上げは伸びません。プロパーで売れるものを控えていては利益は出

ないからです。理由は売れ筋は全体の2割ほどしかないからそれを切らすと死に筋のカバーは出来ま

せん。

 

目標を最初から機械的に高くすると、バイヤーは売れ筋も死に筋も均等に上乗せします。結果死に

筋が多く残るので割引が増え利益率が悪化します。売り上げ目標は腹八分目にして、ヒット分析の

上でいけるものはクイックに判断し大胆な勇気を持って仕入れる事で昨年の利益額を越えるように

します。

 

それを繰り返す事でヒット分析の活かし方や奥行きのデータを貯めることができます。また仕入れ先

にデータを提供する事でリスク共有も可能になるかもしれません。仕入れの失敗を経費を削る事で対

応していると、タコが自分の足を食べるようなもので、やがて足が2本ぐくらいしか無くなってしま

います。

 

 

ファッションフリークは全体の15%

先週の新聞媒体にZOZO新社長のインタビューが出てました。ファッションに敏感な顧客は全体の

15%程だそうです。その次にブランドに興味があるが価格にも注目するグループ約50%、ブランド

よりも価格に反応するグループが約35%と言うことでファッションリーダーの15%を攻めていくと

言う内容でした。

 

この感度の高い層をリアル店舗とECチャネルで24時間対応していく事をオムニチャネルと言います。

まあ、24時間は大変ですが、日中の来客が減っている現実を活かして、日中にSNSの仕込みをして配

信して顧客のリラックスタイムに見てもらい反応を取り込んでいくと言うのも、この15%対応と言えま

す。

 

コツは行きつけの飲み屋で大将が見計らってちょうど良い小皿料理を提供するように、「定期的に鮮

度のある商材をお見せする」事です。定期的に繰り返し、顧客に参加させる「くせ」を付ける事です。

 

アパレルのウエイトを落とす

最後は都心の大手が始めてる事です。売り上げのポートフォリオから洋服の割合を落としていきます。

言ってみれば投資信託で、個別の株を買うと上げ下げで怖いので、なるべく業種が違う株を30種類

くらいちょっとずつ買いパッケージにする事でリスクを減らすやり方です。

 

ライフスタイルと称して、飲食、ホテル、リゾートや金融、リサイクル、化粧品など会社によって様々

です。紳士服の青木が郊外に保有している不動産を利用してリラックスカフェを展開して利益が取れて

いるように、自社のリソースをどの様に活かすかはそれぞれの時代になってきたと思います。

 

社会問題としての解決

NHKの特集番組でも「危機特集」で異常気象はよく取り上げられます。今回の総会で日本が石炭によ

る電力発電を見直さないと発言した事で、森林伐採のブラジルの銀賞より不名誉な「化石賞」の金賞

を与えられてしまいました。これには正直驚きました。

温暖化を止めたい人々の投票で「お前の考えはすでに終わっている」と言う感じです。ネットでは温暖
化自体が捏造されたニュースなんだと、左右入り乱れての政治合戦なので議論に近寄りたくありません。
最近、Netflixで「ビルゲイツの頭の中」と言うドキュメンタリーを見ました。その中であの有名なゲイ
ツ財団の活動で温暖化を止めるクリーンなエコエネルギーシステムを開発している様子が出ていました。
ゲイツ財団が選択したのは、現在の原子力発電の弱点を改良した発電システムです。詳しくは番組を見て
もらいたいですが、設計は完成して中国で展開する目前だったのが、トランプの米中貿易摩擦の影響でた
な上げになってしまってるそうです。私が知っている範囲では、これが最も期待できそうに感じました。

今回は1700文字ほどオーバーしてしまいました。読み疲れ申し訳ありません。
ではまた次回
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