85:「2022謹賀新年」

あけましておめでとうございます

いかがお過ごしでしょうか?

本年もよろしくお願いいたします。

 

昨年より企業様のお手伝いで忙しくしていました、つい更新期間が空いて

しまいました。言い訳ですが、SNSでこれは致命的失敗ですね、申し訳あ

りません。

 

 

さて、デパートの初売りの様子などニュースで報じられていましたが、ま

あまあの人出のようです。実にありがたいと喜んでいたらオミクロン株で

また人出は減少のようです。この先もこのような一喜一憂が続くのでしょ

うか?

 

Contents

ざっくりこの2年の雑感

再建への道「ザ・改革」

コロナの打撃が業界を襲ってきてからアパレル業界の企業業績が注目さ

れて来ました。理由は「あの会社は手元現金が無いから危ない」という

雑誌の特集に煽られた興味本位の視点でした。

 

 

実際には政府の手厚い金融支援で、連鎖して行くような大型破綻は見ら

れません。かと言ってコロナが落ち着き、人出が戻れば元の姿に戻れる

かと言うととそれはあり得ないというのが皆様一致した意見だと思いま

す。

 

そこまで楽観的になれない、「何か重大な消費マインドの変化」を感じ

ているからなのでしょう。

 

重ねて時の流れは残酷で、借り入れた資金もここから返済期限に向かっ

てカウントを刻みはじめます。緊急対応の場面から再び通常運転に、返

済には黒字が前提、その為には成長が前提になるのですが、皆様その準

備はできてますでしょうか?

 

売り上げのトップラインが下がると、相対的に人材含め全てのリソース

が過剰に見えます。健康診断的ベストバランスが気になる経営者は「ま

ず健康になるために人を切らなければ」とスリムな体型維持を優先する

場合があります。

 

トップラインが下がったのが全て外部環境のせいならば仕方もないでし

ょう。しかし、内情はもともと持っていた弱点がコロナショックで悪化

したのが原因ではないでしょうか?

 

販売チャネルの偏り、新規事業の不振、参入マーケットの競争激化、ブ

ランドの陳腐化、組織ピラミッドの歪化、などなど、その見極めが付い

ているかどうかでここからの回復には差が出るのではないでしょうか。

 

間違いなくトップがマーケットの未来が見えて無いと、改革どころか

企業業績は放浪する事になるでしょう。それがトップの仕事だという

意見に賛同します。

 

短期的修正手法だけで安定路線に戻れるのでしょうか。

 

前年比で〇〇を改善する、前年比で数字が上がると言うような目標だ

けで良いのでしょうか?

 

「消費者は何を望んでいる、どう言う生活を望んでいる。それを我々

が手助けする。」そういう指針が必要な時だと思います。

 

難しい事は部下にさせれば良く、ただトップは目線を上げた道標を掲げ

るべきだと思います。成熟から衰退へと、それぐらい難しい段階に業界

は差し掛かっていると思うからです。

 

短期視点か中期視点かだけでも改革の温度差や取り組み内容は変わって

来ます。限られた時間でどう言う改革を行うにせよ、最後は社風や求心

力がこの成否を決めるのではないかと思います。

 

2022年が大きな差が見え始めるスタートラインだと考えます。

(改革の差は始まっており、それが業績の差で見え始めるスタートライ

ンです)

 

バリューチェーン崩壊

サプライチェーンの両端にいる企業、特に下手にいるポジションであれ

ば、自分の思った通りの。。というか自分本位の改革に手を付けている

と思います。

 

後出しジャンケンできる川下にいる小売業者が最も有利です。

 

垂直統合しているグループはほぼないので自社優先の思考回路です。川

上や川中への配慮をする必要は有りません。

 

一方、苦しいのはバリューチェーンの中間を担う企業です。卸先に対す

るメーカーや縫製の立場です。

 

これら中間業者の立場から脱却するために自社製品のブランド化及び

直販を目指したりしますが、その道は困難ですし、思わぬ副作用も発

生しています。(これは後述します)

 

本来、物づくりのサプライチェーンの理想は、言ってみれば二人三脚

やムカデ競走のように一心同体の流れで成立させるものです。

 

物をスムーズに受け渡しするには一心同体の信頼関係が重要なわけで

す。

 

それがコロナ現象の影響とはいえレース途中でいきなり相方がしゃが

み込んで何かを始めれば、もう片方は不安の極地へ陥れられた感がす

るでしょう。

 

その様な二人三脚の紐をはずしてる行為こそが現在進行形の商社飛ば

しだったりするわけです。最近の商社の再編成は今後の業界を語る上

でも大きな変化です。

 

またOEMの営業を中心にしていた会社も同じく大打撃を受けています

。聞いてる範囲では一番苦しくなっています。全くオーダーがもらえ

ない。

 

苦しくなったOEM会社は、一体何を今まで提供していたのか?自問す

るしかありません。果たしてそれは今後どういう形で必要なのか?

存在価値を問われてるのです。

 

調達チェーン最後尾に位置しながらも、チェーンの進行役を担うアパ

レル小売の今後の新成長路線探しに時間がかかればかかる程、これら

”ミドルマン達”は溶けて無くなるかも知れません。

 

もともと、「サプライチェーン上で情報を共有して素早く物を供給し

、お互いに不要な在庫として現金を寝かせない」という発想、ムカデ

競走で最後尾の小売がゴール(プロパーで販売が完了する)と商流共

同体で考える思想のない業界でした。

 

他の業界のサプライチェーンは海外と戦う上で血を流しながら作った

仕組みですが、幸か不幸かアパレル業界は人口増加の恩恵で2000年ま

でそんな苦労を考える必要はありませんでした。

 

国外に出る必要もなかったのです。

 

豊かなマーケットがあったからです。しかし、その後20年もそれに甘

んじてた事に対するツケをまとめて払う構図に現在なっています。

 

アパレル業界のこれからの改革の道は、先駆者の他業種から見れば短

パンとTシャツで富士山に登ろうとするパリピの群れに見える事でしょ

う。それぐらい簡単に考えていると思います。

 

どこかの成功例をパクればいい、完コピすれば良い。ずっと20年そう

やって来たのですから、もはやそれが正論であり正義化しています。

 

今までのバリューチェーンは店頭販売情報を持っているものが強い、

発注量、納期で駆け引きするその場限りのバリューチェーンでした。

想定外とはいえこの緊急事態で既存の繋がりは全てふっとんでしまい

ました。

 

またお互いを繋いでいた紐まではずして、自分だけ生き残ろうとい

うのですから、新たなバリューチェーン作りは猜疑心の中での出発

になる事でしょう。

 

バリューチェーンの延命策

 

加えて2021年中盤からいきなり世界経済はインフレに巻き込まれてし

まいました。

 

我らが業界のサプライチェーンはその場その場で、自らの要求を各個

で主張しますので、製品原価は川上から積み上げ式に盛り上がって来

る事でしょう。

 

理想的なバリューチェーンであれば、消費者需要に影響が最小で済む

ような策をチェーン全体で協議して工夫する事も可能かもしれません。

 

トヨタやそれをベースにしたZARAが強いのは、成長局面にも強いけ

れど需要が弱い時にも対応できるのが素晴らしいのです。

 

しかし多くのブランド店頭ではEC販売の強化政策のもと、クーポン等

のオフ施策合戦から抜け出られません。セールの拡大とコストの上昇

の板挟みは業界を苦しめるでしょう。

 

目先のコストを解消しろという短期目標の指示。一方で中長期目線で

バリューチェーン改善要求が現場に届けば、どちらの指示を優先する

かは自明です。

 

サラリーマンが生き残るためには、中長期の夢物語に付き合っていて

はダメなことは誰しも本能的に感じ取るでしょう。

 

ですから、新春の大改革には「俺の夢について来い」ぐらいのトップ

メッセージが必要になってきます。本気さが必要です。

 

新たなバリューチェーン

コロナ以前から投入商品の消化低下の状況を受け、新たなバリューチ

ェーンの構築に各社全力を振り絞っていると聞きます。

 

目的は2つ、プロパー消化を高める事と不要な在庫を持たない事です。

 

ホームセンターや私鉄沿線沿いの生活圏で展開している企業の様に、商

品価値の減損期間を長く取る(一度店頭から下げても再プレスしでまた

出す)ことでプロパー消化を下げない(セールしない)という戦法を用

いる事ができるのは一部の企業だけです。

 

商社飛ばしもそうですが、運転資金が増えるので誰でもはできません。

 

どうしても都心型店舗店頭は賞味期限が短い、そうなると取れる戦法は

2つしかありません。

 

Aプラン)まとめ生産やQRフォローを考えない、売り切りごめんの商材

く投入いく。(小皿料理を追加していく、ZARAの思想)

 

Bプラン)手堅い範囲にMDを限定し、半完成の中間在庫を持ち需要にな

合わせた供給をする。(比較的定番品の比率が高い、デニムのよ

うな柱になる素材を全社で使うなどする)

 

スーツや靴のセミオーダーで完成在庫を持たないのも、Bプランになり

ますね。

 

(Aプランの肝は企画力になるのですが、そんなに企画者を抱えられな

い会社はAIを投入してサンプルまで自動化を狙います。安い価格帯ほど

この様なロボットを投入する傾向がある様です。よって価格下げると思

わぬ強敵を相手にする事になります)

 

そこで、これらA\Bの戦略を取るには新たな管理システムが必要になり

ます。両プランとも型数及び時間管理が複雑化するからです。

 

この新たなシステムを導入し、バリューチェーンをクラウド上に描いて、

クラウドへの参加アカウントを関係各社に提供します。口座が与えられ

ると、アカウントからログインし(限定した)情報を見ることが出来ま

す。

 

・必要な情報が参加者に見える化できる、判断が早まり精度が上がる(

願望込み)

・アナログデータが積み重ねできる、過去データーの再活用ができる。

・多国籍向けの様に、元型をベースに他品番へ修正がし易い。

・仕入れ先に希望を開示して、入札ができる。などなど

 

これがPLMというシステムです。2000年代から宇宙航空・重電機・自

動車・家電と次々に広まりアパレルが最後になりました。

 

小売企業がPLMを持てば、参加してる工場へ次の企画がクラウド上で

提示されたしします、(こういう値段、納期でできますか?と)当然、

競合先も見てるので競り合いになります。

 

このPLMのプラットフォームを自分で持つか、得意先が持つかで大き

な差が出てきます。

 

自分で持てば、運用コストは自分で払わなければいけません(参加企

業のコストを持たせたとしても商品原価に乗るだけです)。しかし、

自分の仕切りでオーダーを出すことができます。

 

生地メーカーが持てば、生地在庫の一覧を利用する事が可能になりま

す。そのプラットフォームで取引を広げれば、散らばっていたデータ

が集まります。

 

それを分析することで需要の先回りをして新たな富を得る事ができま

す。プラットフォームの魅力は情報の集積になります。中期的な視点

です。

 

ですので、現在、川上・川中・川下で開発合戦中です。乱立だそうで

す。事情通の方に伺うと「(協力し合わない)懲りない業界」とのコ

メントでした。残念!

 

また、Aプラン、BプランどちらをするにせよPL Mの様に業務の見え

る化が必要なのですが、目の前の業務専任になっているアパレル企業

の生産担当者にそんなリーダーシップがあるのか?疑問視する声もあ

ります。

 

先ほど述べたようにサラリーマンは中期目標に夢は持ちません。

 

構造改革と新しい成長路線への切り替えにはこの様なシステム投資が

必要だ、という動機はよくわかります。しかし、システム投資をした

だけの投資効果があったかを考えるとどうでしょうか?

 

最も大事な効果は在庫が少なく回転し現金の回収が早くなることです。

ではその増やした現金をどこに再投資するのでしょうか?

 

そんな成長する投資先が経営には見えてるのでしょうか?世界経済の

インフレ、温暖化とカーボンゼロ、もちろん少子高齢化、おまけに時

々天災の環境で。

 

唐揚げを10人前作るというオーダーがあれば、

①大きな鍋でまとめて揚げてしまえ

②10人前の材料を衣だけ付けといて、後は合図で少しづつ揚げてい

くのどちらかです

 

現場からすると明らかに②がめんどくさいです。

早く回転させることに”意義”を見出せないと、このめんどくさいを上

回る価値もしくは夢を提示しないと現場は行動しないでしょう。

 

投資資金もかかり、現場はめんどくさいと不人気な”シン・バリュー

チェーン”。しかも、目的も判然としない。それでも皆様はやります

か?

 

これらの構造改革や新たな成長戦略には、従来の短期視点から中期視

点に切り替えるべき要素が入っています。その混ざり込んだ複雑さに

より、立場やマネジメントの差を持つ役職者ごとに理解の違いを産む

様な気がします。

 

それはまるで今までその日出された宿題を真面目にやってるだけの受

験生に、「将来何になりたいんだ」と突然聞くようなものです。

 

毎日先生から褒められることを生きがいにしている受験生に、「急に

聞かれても。。」という問いです。

 

マネジメント特有の癖である、短期の課題や目標を優先する術に影響さ

れる経営陣は、アフターコロナの目標や大義名分を語るのに非常に難儀

してる事でしょう。

 

まさに受験生のような(無自覚かもしれない。。)立場だと思います。

 

中長期を語れない企業の現場が、シン・バリューチェーンを考えたオー

ダーを出せるわけがないと私は考えます。

 

よくある話ですが、深く考えずに始めたシステム投資の落とし前は、自

社の生誕担当者の異動(社内なのか社外なのか)で相殺されるのでしょ

う。

 

商社飛ばしの次は生産部飛ばしとなると笑えませんが、高付加価値で十

分な利幅のある価格帯に止まれない限り無人化へと流れは進んでいくの

ではないかと想像します。

 

以上まとめますと新春の予言としましては、夢の様な将来像を真面目に

語り、従業員を鼓舞するリーダーの会社が有望という事になるのではと

想像します。

 

こういう有事にはオーナーが大半の株を持っている様な状況でないと

大胆な変革指示は出せなかったりします。合議制でこの難時を乗り切

ろうとするのは無理に近い難易度だと思います。

 

リーダー勝負の時代だと思います。

 

ここでふと思いつきました

「それこそビッグボスじゃないか!」ww

 

残りは後編で

後編の内容は

・これからの専門店とメーカーの立場

・ECで利益は出てるのか?

・この状況からの脱出法とは

 

を予定しています。

ではまた次回

 

 

 

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