前編

 

 

中編

 

 

前回、人は在庫管理では保有効果が働き(自分の仕入れた商品はよく見える)こともあ

り見切りが遅れる、それをAIを導入すると冷静なジャッジがお金を生むという話をし

ました。

 

 

Contents

現状維持バイアス

 

プロスペクト理論では現状維持バイアスというのもそこに加わっていると唱えます。

損失回避性が人は高いという話をしましたが、その気持ちをより保守的にさせるのが

現状維持バイアスになります。

現状維持バイアスとは、新しい事を始めたり、環境を変えたり方法を変えるよりも、

今のままの方が良いという気持ちが強く働いてしまう事です。

 

変化を考えなくもないけど、もし変化を選択した場合に多少の失敗や損失が出た時には、

人はその損失を大きく感じ取ってしまうのです。「あ〜試さなければよかった!」

試した損が大きく見えれば、それを乗り越えてチャレンジするのは難しいということです。

 

新しい味のアイスクリームで失敗した覚えはありませんか?ww

 

専門店のオーナーが頑なに仕入れを変えない、メーカーの社長が同じ作り方をしてしま

う、営業部長が営業方針を変えないのには心理的なワケがあるという事です。現状維持

の問題は日本中の会社に見られる特徴でもあるので、今あなたの頭の中には上司かパー

トナーの顔が浮かんでいるとは思いますが、バイアスのせいなのであまり責めないでく

ださい。ww

 

現状維持バイアスの打破が必要だというテーマでベストセラーになった本を覚えてます

でしょうか?「チーズはどこに行った?」いつもの場所にチーズが少なくなってきたの

に気づいた主人公のネズミが、多くの仲間が環境を変えるリスクを主張するのを振り払

い新たなチーズ探しの旅に出る話です。

 

成熟期から衰退期に向かう中で「何かを得るには何かを捨てるべきだ」と繰り返し書かせ

ていただいているのも、この現状維持バイアスと戦う必要がありますよ!という事であり

ます。「茹でガエル」という話も同じです。

 

ただ「残存者利益」というのものがありますので、変化しなかった者同士の椅子取りゲー

ムで勝ち残れば、皮肉にも生きる博物館としてそこそこの売り上げを取ることができます。

これは百貨店のことです。

 

 

では人間が持つ非合理性をいくつか紹介しましょう。

感応度逓減

 

これは利得と損の”小さな変化”には敏感に反応するけれど、その差が大きくなると逆に

反応しなくなるということです。

 

最初のビールの一口は実に美味しい!売れ筋と見込んだ最初の1点が売れると嬉しい!

しかし続けて飲むと、売れてもさほど喜びは感じなくなる。。そのうち損が気になる

逆に、小さな仕入れの失敗には激しく反応する「うちのバイヤーはセンスがない!」し

かしご安心を、失敗を続ければそのうち気にならなくなりますww

 

 

損はまとまると気にならない

この心理は、借金がクレジットカード会社ごとに散らばっていると気になります。夜も

寝付けない。ところが一まとめにすると不思議なことに気にならない。それどころかも

っと借りてしまう。。人の心理にはこういう落とし穴があるので注意したいものです。

 

確実性効果

 

確率というものがありますが、宝くじが1000万分の1と聞いて「誰かは当たるんだから」

と思う人は楽観的です。人が感じ取る確率を主観的確率と言います。

では一等の当たりを出すにはどのくらいの確率なのか知りたければ「1000万日の1」と日

数に換算して考えてみたらどうでしょう?

 

つまり2万7千4百年となりクロマニオン人が氷河で全滅したあたりから現在までのどこ

かの1日が当たりということになります。そうすると何度生まれ返っても誕生日がその日に

重なる(大当たり!)になるのは難しい事がわかります。これが客観的確率です。

そう聞くと、TVで目にする宝くじのコマーシャルを見ると虚しくならないですか?

しかし「それでも買います」という人も多いから成り立っているわけです。つまり主観

的確率が客観的確率より高いと思って人が宝くじを買ってくれているのです。

 

確実性効果というのは人は、宝くじのように客観的確率(年数に変換してみたように

絶望的に低い)という現実に対すると主観的な確率は上がる(誰かは当たる、俺かも?

)傾向があります。

 

逆に誰でも合格する試験(客観的確率が高い、不合格者が少ない)場合には主観的

確率は低く見積もってしまう(10年に一人の恥ずかしい不合格者は自分になるかも)

ゆえに自分でも驚くくらいに試験勉強をする。

 

人の本性はこのように非合理的なので、客観的確率が99%の物事と55%の物事があった

場合、同じ1%の精度を上げるためには99%を100%にすることに力を入れるそうです。

100枚仕入れて99枚売れた場合、残り1枚の販売に全力を尽くすのです。売れ筋は売り切

りたい(また仕入れる?とんでもない、売り切ったばかりじゃ無いか!)ww

 

私が営業をしていた当時、お店のバイヤーに「シーズン末で死に筋しか無い店でどう

やって売り上げを作るのか?」と聞いたところ、「仕入れたいが店のオーナーが売れ筋

が残っていると不機嫌になるが、死に筋だけだと何も言われなくて済む」と聞いて、当

時はなんとも言えない気持ちであったのを覚えています。

 

メーカーさんはこの「確実性効果」を乗り越えるべく商談する工夫をしなければいけ

ないのです。

 

セブンイレブンの売れ筋である「おにぎり」の発注を例に取りましたが、なかなかオーナ

ーが在庫の積み増しをしてくれないのには様々な行動経済心理があることを見てきました。

このように人はそれた考え方に導かれていくので、店の経営を直感的に行っているとうま

くいかないのです。

 

 

以前、ダッシュボードの話をしましたが、一眼でわかる車のダッシュボード(燃料、スピー

ド、回転数など)のような店の指標一覧が重要です。ひと目で見ればわかるところに、視覚

的にわかりやすく表示することが大事です。わかりやすくするのは従業員も見るためです。

 

 

メーカーは丈夫で頼れる連結器(営業マン)が必要です。これだけの損したくない心理があ

る方々を相手にしているのですから、しっかりとしたストーリーを持って営業する必要があ

ります。

 

また店頭顧客情報は非常に重要です。これなしでは、今後の戦略は何も立てらいのではない

でしょうか?ZOZOのようなモールに出ても手に入れられません。懇意の店に頼むなり工夫

したいところです。

 

リスクに対する心理のまとめ

 

確率による人の態度のまとめです

利益が取れる  かつ  成功の確率が低い→ 大胆に挑戦する

利益が取れる  かつ  成功の確率が高い→  慎重になる(売れ筋追加に慎重)

 

損をする場面  かつ  そうなる確率が低い→リスクを避ける、小さい損に神経質

損をする場面  かつ  そうなる確率が高い→リスクを取る、華麗なるチャレンジャー

いや不思議ですね

 

特に最後の「損をする場面」でリスクを取るというのは、ギャンブルで負け込んでいる

場合、「最後の勝負」と言って家も財産丸ごと賭けるシーンをドラマで見ると思います。

私も競馬で負けている日は最終レースで「大波乱が起きて、今日の負けを取り戻してく

れる」と勝手に思い込むことがありました。。w

 

皆さんも、負けが続いている時は熱くならないようにご注意ください

ではまた次回

 

 

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