101:「絞って広げてまた絞る」
こんにちは、いかがお過ごしでしょうか?
今日は、不調になってしまった主力事業について考えてみまし
た。そうならないためにと、そうなった場合の考え方について
です。
主力が不調では会社は困りますから立て直したいわけですね。
不調が長引いている事を自他共に認めるのならば再生という事
になるでしょうか。
事に至る要因は、組織の問題や戦略の問題など多様だと思いま
すし、何か決定的な要因もなくジリジリと衰退してる場合もあ
るでしょう。
今回はマーケティングの視点に絞って考えてみました。
課題を3つの仮説に分けました
・成長の時間がかかっている→環境も変わっている
・顧客の成熟化
・普遍的な価値とインサイト

Contents

不調に陥る事例

顧客が消えた

主力事業というものは時間を掛けて成長しています。その過程で

顧客と同じ時間を有してるわけです。

 

10年のお付き合いなら20代は30代へ、子育て世代は子育て終了

へとステップを踏んでいるはずです。

 

特定の世代にアピールしている商材が主力だったすると、一定の

卒業生が出るわけです。それでも主力なりのスケールを維持でき

ていたのは新しい世代の流入が埋め合わせてくれていたわけです。

 

その様に考えると、次世代が卒業顧客と同じ価値観を持っていて

くれるというのが大型事業の大事なポイントになって来ます。

 

もし新陳代謝が早い商材、例えばフランフランの様な雑貨やサマン

サタバサの様なブランドは微妙に変化する次世代に合わせていく

必要があります。

 

ここで飲食の例を見てみましょう。ファミリーレストランです。

ファミレスの歴史
昭和から平成にかけての青春世代の方にはファミレスにはファミ
ー客がきちんと来店していたのを記憶の中に焼きついている事
でしょう。
その代表格、すかいらーくグループが現在約50億の巨額赤字で苦
しんでいるそうです。インフレ等の環境要素はありますが話を簡
単にするため、マーケティング(対象顧客)に話を絞ります。
横川4兄弟と言われる同族で立ち上げた会社ですが、事業のスター
トは安売りスーパーからで米国視察でデニーズを見て対象をファミ
リー客に”絞って”打ち出します。
当時の百貨店の食堂のお客様を奪う形で、「家の近所でレストラン
体験」というコンセプトでした。
ファミリー層が増えて来たタイミングで憧れの百貨店食堂の代替
体験を提供するという目論見も当たり成功したわけです。それを
体験した昭和組の思い出のシーンにもそれは残っています。
そのように考えれば、主力顧客層が現在はどうなっているのか?
会社が不調と言うことはファミリー層が来店しなくなった事が疑
われます。
今、ファミリーの食事風景を探すと思いつくのは回転寿司とSC
のフードコートです。回転寿司の店舗数を見れば一目瞭然です。
つまり競合が現れ、乗り換えられてしまったわけです。
かつてファミレスを愛用した子育て層は子育てを終了し、シニア
世代になっています。
この人達はファミレスに愛着があり楽しい思い出もある、しかし
現在は自分たちが対象とはなっていない。(卒業生の方々はコメ
ダ珈琲店に流れたりロイヤルホストのゆったりモーニングに集ま
ったりしています)
卒業生はともかく、次世代のファミリー層が回転寿司に流れたの
は回転寿司チェーン同士の競争で回転寿司のサービスが進化した
事もあるでしょう。
その様の考えると新たな挑戦者を見逃していたのかもしれません。
インフラとしての役割に乗っかっているブランド事業

時間が変化をもたらすとすれば、商業施設の進化・変化という

事もあります。

私たちの業界でも、駅から少し離れた立地にあった百貨店が、
駅自体がデベロッパーに変身した駅ビルに顧客を吸い上げられた
現象がありました。
似たような商材の原価が平均25%と35%の差で駅ビルがお値打
ちに見えたこと。百貨店の強力なポイントカードの囲い込みも同
様のサービスで威力を中和させたこと。
服飾以外の扱いもある百貨店に比べ、服飾に特化してしかも入れ
替えの頻度を上げて魅力を出したことで、百貨店の顧客層が移っ
て行ったと考えられてます。
単独で路面店で商売されている方は別として、都心などは何かし
ら館に属してますから、その館の意味合い自体が競争力の一部に
なっていると思います。
ファミリーレストラン創業期には路面勝負でした、しかし現在で
はSCがあちこちにでき、家族での滞在時間を長くする競争戦略
を取っています。
ですのでフードコートは充実しています。
この様に、時代の変化はインフラの変化を含んでいます。その上
で主力事業を展開するのならばインフラが持つ戦略とあわせてい
く必要があります。
以上のような細かい変化を注視する事を怠ると(成長期から成熟
期へと変化したことを)突然目の前の顧客が消える!事態に驚く
事になるのでしょう。
自身の成長目標ばかりに捉われ顧客変化を見逃すとその喪失感は
大のではないでしょうか?
では今後ファミリーレストランの様な赤字事業は衰退期を避ける
にはどうして行けば良いのでしょうか?

絞ったものを広げる、広げたものを絞る

顧客層の変化

これは社会の変化といえますが、1980年代と家族構成を比べてみると

家族構成

     現在   1980年
・単身世帯 38%  19、8%
・夫婦と子供42%  25%(18歳以下の子供の場合 14、6%)
・夫婦のみ 20%
・一人親と子 9%
・三世帯同居 3%

 

変化から分かるのは、典型的なファミリーが15%しかなく、形

態が分散しているのと、単身者が増えている(これは高齢者と考

えればあまり意識する必要はないかも)ことです。

来店は習慣化されてるがほしい物がない
まず成長期から成熟期に入った場合、各企業が行うのは「絞って
開いてまた絞る」になります。
ディズニーやマクドも同じく、成長の上限近くになると対象顧客
を広げて成長の鈍化をカバーしようとします。
ディナータイムを強化したり、ティータイムに注力したりします。
ファミレスで言えば、メニューが広がったりフリードリンクで長
時間滞在を許して食事客でない人も顧客としています。(この時点
で成熟が良くない方へ向かっている事を自覚すべき)
このタイミングで自社商品に鮮度がないと自覚した場合、原因を
探ります。サービスなのか商品なのか立地なのかです。
商品と考えるしまむら
しまむらさんは現在健康関連商品と化粧品に扱い品目を広げてま
す。
都心への出店は従来の立地を捨ててるわけではないので、品目で
対応していると見ています。
郊外紳士服チェーンも自社開発でジムにしたり、ワールドなどの
支援で扱い品目を変えたりしています。
サービスとDX
成熟期に入った企業が抱えるジレンマは、長年の顧客からの期待
値が高い事です。充実したサービスにはコストが掛かります。
成長期は新規出店の利益でそれらはカバーされてますが、成長が
鈍化すると販管費が重く見え始めます。
顧客あってのブランドだけど、顧客にコストは掛けられないのジ
レンマです。(経費の一方的な削減は顧客は裏切りと見ます。ディ
ズニーの雇用関係悪化のニュースを聞くと事態が推測されます)
今の時代でコンサルから提案されるのはDXです。少人数で運営で
きる仕組み化でコストを下げましょうと。
飲食業界ではタッチパネルやQRコードの読み込みなどで省力化
が進んでいます。一方で、コメダやサイゼリアはフル接客(注文
〜配膳)しています。
サイゼリアさんのインタビューでは既に成熟期の段階でサービス
を落とすと”顧客離反”の損の方がコストカットより大きいと言っ
ています。関係を損なわず、ゆっくりたくさん食事してもらいた
いのです。
ですので顧客からは見えない部分で(厨房機器のアンペアを改造
、使用する水量を絞る)努力してるそうです。
傾いた大型事業が全て手を抜いていたとは言いませんが、どこま
でも成長に比重を置いていると、顧客重視の声は小さくなるので
はないでしょうか。
この様に考えると
成長期から成熟期に入ったと自覚のあるブランドは大なり小なり
戦略の修正を行なっていると言えます。
その修正を”感覚的に”表現すれば「絞っていた(サービス・品目・
立地)をまずは広げる。その上で広げた効果がマイナスが大きい
と判断した場合また絞るの調整を繰り返すのだと思います。
(マイナスとはコンセプトが崩れる、顧客満足度の低下などの副
作用を指します)
成長鈍化どころか一気に衰退してしまうのは、競合の登場と自社
の戦略の魅力低下の複合事態なのでしょう。
敗者の弁としてはいかにも「新興
勢力にやられた」と被害者的なコメントをよく見ますが、踏みと
どまって企業の努力を聞くと自滅の割合の方が大きいと感じます。
「郵便ポストが赤いのも私の責任」とはユニクロ会長の名言です
が、他責思考では中長期を勝ち抜くことは難しいのではないでし
ょうか。
よってすかいらーくに頼まれないまでも、改善策としては再度「
対象顧客を絞る」ことになります。メニュー自体の専門性を絞る
ことも同義になります。
わざわざ行く立地になった以上、何かしらの尖ったあそこでない
と食べられない物がなければ難しいのではないでしょうか?

ブランド創業期は絞って当てている

何かで一番が出発点
ランチェスター戦略(弱者の戦略)的にも”何かで”No1になるの
が戦略の基本です。
今から飲食を立ち上げるのならば何かで一番を狙うはずです。
高齢者向け豪華朝飯戦略、百貨店スイーツ戦略、インバウンド
定食戦略、肉好き戦略、エリアか価格か対象客かNo1になるも
のを見つけると思います。
同時にそれを欲するペルソナも決めるはずです。
スイーツのシャトレーゼも最近では経営不振の旅館・ホテルを
買収再生させてますが、宿泊にスイーツを組み合わせてファミリ
ー層を呼び込んでます。
スイーツ食べ放題+温泉宿=親子連れ、女子グループ
そのインサイトは「癒し、自分へのご褒美、のんびりしたい」
です。
自社の商品に何かを組み合わせることで潜在顧客のインサイト
を探し当ててます。
インサイトの変化
もし物を当てれば良い事業になるのか?物は足りているので事
で楽しみたいとお客様が考えているのであれば、それはインサイ
トが変化していると考えられます。
主力事業ゆえに規模が大きいと、なかなか対象顧客を絞り直す
のは困難です。その場合はインサイトの変化を掴む必要があり
ます。
本当の自分が何を欲しているのか?は正面から質問されても答
えられる物ではありません。
手段としては
・会話する
・第三者に聞く
です。
主にSNSや店舗などでフォロワーがいて、好意的な関係があるの
のが前提になりますが、多く会話をし、質問することから見えて
くることがあります。
特にお客様から質問されることが大事です。質問するにはその前
提があるはずだからです。何のためにその質問があるかを分析す
る習慣があると良いと思います。
第三者というのは顧客の声を代弁してくれる人の存在です。
例えばインフルエンサーの方はご自身自体がブランドですから、
マーケティングの意識はあります。
その上で顧客層とも接しているので両方の考え及びそのGAPを
知っていることがあります。定期的にそういう方の話を聞くの
は役に立ちます。
基本的には創業時に立ち返り
・絞れていたコンセプト・戦略は今でも尖ってるか?
・顧客のインサイトは変改していないか?スライド対応できな
いか?
を考えてみると良いと思います。

広げる試み

絞った後で広げる

ランチェスター戦略で絞りすぎると、分母が大きくならないと

いう方がいますが、順番が大事だと言ってるだけで対象を広げ

るなとは言っていません。

 

まず事業が存続するには何かで評価されて一定の利益が必要で

す。

 

まずはファミリーレストランとして認知されて、その派生系で

焼肉に向かったりサラダバーで高級志向に向かったり分母を増

やすのはかまわないわけです。

 

絞ったり広げたりするのは正攻法の調整です。

しかし、従来の顧客とのコンフリクト(対立)が発生します。

 

マクドナルドのアプリで事前注文はアプリを使いこなす顧客

には便利ですが、アナログ派で列に並ぶ顧客からは割り込み

にしか見えません。

 

破綻したなどのニュースが流れるブランドはその過程の調整

に失敗したか、そもそも見逃したか?のどちらかだと思いま

す。

 

それらを防ぐには「可視化」だと、最後に社名を宣伝して終わ

ります。w

また次回

 

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