79:「偉大な社長が障害になる」

こんにちは、いかがお過ごしでしょうかいかがおすごしでしょうか

 

 

今日は前回の創業20年の記事で触れた「社長の存在」についてです、20年も歴史を重ね

られる経営とは?と言うテーマで良い事例悪い事例でお伝えしました。今回は引き続き

社長が陥りやすい罠についてまとめて行こうと思います。

 

 

Contents

社長が全ての判断を行う

例えば、社内で以下に思い当たる事はないでしょうか?

 

・商品判断は全て社長が行っている
・出来てきた企画が思っていたのと違うと、手を入れてしまう
・「どうして皆が自分と同じようにできないのか」と悩んでいる
・社長が話し始めると、周囲が黙ってしまう
・”社長に決めてもらおう”となんでもかんでも相談に来る
・従業員は不出来でもかわいい
・「自分がもう一人いればなあ〜」といつも考えている
上記例は「実学社長のマーケティング」 岸谷祐司 著 中経出版より参照しました。
上記の項目を見て「何が悪いんだ!自分が創業依頼大事にしてる事だ」と感じられたか
も知れません。
もちろん悪いことではないんです、自分の会社です、社長自ら大事な商品企画に参加し、
決めていくのはスピード感もあってリーダーシップが成果へつながり易く、多くの成長
企業で見られる形です。
ただ、そのバランスによっては、つまりやり過ぎると会社の活力を奪ってしまいますよ
と言う話です。メリットとデメリットのバランスになります。上記例はデメリットに傾
いてるのではないですか?の問いかけです。

社長の存在が制約条件になる

社長のマーケティング

もともと社長が独立できたのは商売の感覚があったからで、どう言う需要があり、何を

提供するとお客様は喜んでくれると言うことを掴んで実行したから現在があるはずです。

 

つまり、社長のマーケティングとは肌感覚の市場調査というのもではなく、「何が収益

に変わるのか」を追求する真剣勝負の感覚と言えます。

 

そんな事ができる人はなかなかいません。社長以外にできる人は社内にもいないのが普

通です。何かはできる番頭さんがいても、全体で見るといまいちと感じたりします。

 

とは言え、何でも社長がしているとどうなるのでしょうか?

今後、自分がいなくなったら?もし休む羽目になったら?

社長が先頭に立つ組織はシンプルで強みを活かせる仕組みですが、変わりが効かない

組織でもあります。鉛筆は折れるとそれまでです。そこから次の芯を削り出す時間は

リーダー不在になります。

 

社長に聞けば何とかなる、聞かないと何も始まらないという罠

会社全員が社長に紐づいてます。だからみんな社長の指示を待ちます。その方が確実で

すから。従業員はその方がストレスは無い。

 

社長が担当するのは商品企画から販売まで幅広かったりします。だいたい、サプライ”

チェーン”というぐらいですから川上から川下まで幅広いのです。

 

これ全部社長が見ていると、社長の24時間はパンクします。

 

幸か不幸か、商品が売れていないと24時間働いて何とかなったりします。ところが、売

れると社長の時間は破綻します。大概身体を壊されるのではないでしょうか?(精神状

態は売れていてナチュラルハイなのでその時は感じませんが w)

 

メーカーさんで5億、専門店様で1億こえてくるとそんな話を聞いたりします。(人を増

やしたくない、組織化したくないけど忙しすぎるのボーダーライン)

「社長が制約条件になる」というのはそういう状況を指しています。それが悪いという

ものではありません。しかし、だんだんと考える力を失って行きます。余白ないノート

の様に、コーヒーが溢れるカップの様に、毎日目の前のことに忙殺され「ふと考える」

と言う貴重な時間すら失ってしまいます。

 

もし、部下が3人いれば騎馬戦の様な形を取る事ができます。部下3人が馬の形になり

社長が上に乗るのです。するとどうでしょう視界が開ますよね。一段高いところから敵

や味方を区別できます。

社長がフィールドの高さで全力で走り回るのも活力を生みますが、視野は目の前に限ら

れます。遠くを見て次を予測し、先々の手を打つことは出来ないのです。やはり平地の

視点と騎馬の視点と、高さの違う2つの視点を持つことは「安定した経営」のためには

重要です。

 

このように何でも社長がしてしまう。人に投資をしない。組織化に尻込みするのが社長

の陥る最初の罠です。

 

小売店の組織問題

客観視できなくなる罠

次に、会社の規模が大きくなった場合についての話をします。専門店で言えば従業員と

ともに店舗数の増加のとき、メーカー様では販売チャネルの拡大やブランドの増加など

の場合によく陥る罠です。

 

創業時に立ち消えずに会社や店が残ったのは、その時の需要を掴んでいたからです。つ

まり市場の声が聞こえていたと言えます。それがいつの間にか聞こえなくなってしまう

、見失ってしまう、客観性を無くしてしまうというのが次の罠です。

 

事業の拡大は喜ばしい事ですが、投資を重ねるにつれ「こうあって欲しい」という気持

ちも強くなったりします。買い手目線から作り手目線に移って行きます。

 

人を増やした、事業を拡大した時の心中は「うまく行って欲しい」思うのが普通ですか

ら、そう言う期待感は心の中で増してきます。そう言う事情も目線の違いを加速させま

す。

 

また地元では名士となり、有名店の経営者などとのお付き合いも広がり社会的な信用も

増してきます。そうなると、創業事に比べいろいろと変わってくるものがあるのではな

いでしょうか?必要以上に方に力が入ったりします。

 

よくアパレル企業で「前年踏襲の罠」と言ったりしますが、規模が大きくなると(大き

いということはたくさん売る事ですから)ヒットを出さなくては行けません。毎年、そ

んなヒットは見つからないとなれば、どうしても同じような物を繰り返したりします。

 

実際、ビッグヒットは3年続いたりしますから、(またお客様が飽きるまで切らすなも

商売の鉄則です)ロングセラーと言えばそれはそれでよいのです。

 

問題は、そういう時にしばしば、作り手の目線が強くなって来るのです。「これだけ仕

込んだから、そういう結果が出て欲しい」「新しいブランドを作ったから、市場が反応

して欲しい」とプロダクトアウトと言われる出して目線が強くなってしまう事が問題と

言えます。

 

ゆえに、大きくなっても尚且つ揺るが無い企業や店舗、メーカー様にはその罠に対処す

る(いわゆるワクチン)方法を会得しています。それは客観性を得る(維持する)事で

す。

 

私が師事したセレクト創業者は、個人人脈で業界に幅広く意見を聞ける方でした。編集

者からスタイリスト、モデルさん。お店を客観的に見てダメならダメと言ってくれる社外

の目利きの方達です。

この業界は春には冬を仕込んでますので、マンネリ化陳腐化に気づくのが遅れると3シー

ズンは痛手が広がってしまいます。早すぎず、遅過ぎずマーケットの声に耳を貸す。創業

期には出来ていた事が規模が拡大すると見失い易いのです。

 

そういうMDや仕入れでのアドバイス以外にも、経営の客観性は重要です。大概、独立か

ら馴染みの税理士さんがその代役(定期ミーティング契約の場合)をされてると思います。

 

できれば業界の方で創業期から見ていてくれてる方で、会社の強みを理解してくれてる方、

に定期的なアドバイスを求めるまた社外役員なりで意見をもらうのが、この罠への有効な

対処法です。

 

大事なのは忖度なしにストレートに直言してくれる方です、そう言う方々の存在が物差し

になっていただければ、曲がった線を描く事はないでしょう。大きな難事が小さな難事で

治るでしょう。

家族問題と会社問題の混在

もう一つは創業20年を超えて、30年ぐらいの社歴になると親族が会社の中に入ってこら

れるケースが出てきます。

 

もし、社長の一声で全てが動く仕組みのまま、家族関係の緊張まで社内に加わると大変

です。ただでさえ、何をしたら良いかわから無い従業員は、社長の機嫌にますます影響

されていくでしょう。

 

家族経営が難しいと決めて掛かっているのは大変失礼な事でありますが、多く目にする

のは距離が近い人間関係ほど「会話をしない」からです。家庭内では言葉の代わりに態

度で示したり、「ああ言う人だから」と割り切ることは簡単で許されもします。

しかし、この関係のまま会社にまで「会話レス」が混入してくると会社全体を蝕んでき

ます。

 

この雰囲気の悪さは、店の業績のせいなのか?家族で喧嘩してるせいなのか?と。従業

員からすると巻き込まれる災難は避けたいです。

 

もし家族経営がうまく行っているケースがあれば、家族問題と会社問題は分けて行われ

ていると思います。問題となり易いのが、家族間の役割分担の問題。誰の責任なのか、

渡した仕事には正当な評価がなければいけません。

 

ですから、あるべき姿は経営会議と並行してオーナー一族の家族会議も行われていて、

その様な役割分担や意思疎通は従業員がいないところできちんと線引きされてないとい

けません。

 

商売の失敗は七転び八起きで復活を遂げる人は多くいらっしゃいます。しかし、会話レ

ス、社長の独裁、家族間のしがらみが合わさって来ると良い展開になる事はないでしょ

う。そう言う会社にお勤めの方の相談に乗る場合は迷わず転職をお勧めしています。

次に会社の規模を問わず社長が陥り易い5つの誘惑を紹介します。

社長を取り巻く5つの誘惑

第一の罠「自分の地位を守りたい」

これは社長が現実に目を向け無いことを指しています。自分の評判や自尊心を守るために

現実を無視したり、取り巻きを重用して従業員の訴えを聞かない、自分にダメージが及ぶ

決定から逃げるなどです。

 

社長が向き合うべきなのは「成績」だけです、つまり商売で現金が増えているのか?が

社長の評価になります。これを直視しないと始まらないのに、ついつい座っている椅子

の座り心地(自分の評判)に溺れてしまう罠のことを言っています。

 

第二の罠「部下に好かれたい、嫌われたくない」

直属の部下が期待した成績を達成できない時に厳しい事が言えるかどうか?です。

チームワークを保ちつつも、求める数字への執着を求められるか。そういう発言をす

れば嫌われる、給与を求められるなどの反発を嫌い、行動を避けているようではいけま

せん。

 

社長は好かれる存在ではなく尊敬されるべき役職です。

 

第三の罠「間違えたくない、正しい決定をしたい」

そもそも部下に厳しく目標を問えないのは、なすべき目標を伝えてない、またはどうす

れば良いのかを指示していない、どこまでが責任なのかをはっきりさせていないなどの

原因があるからかも知れません。

 

そういう曖昧な状況を容認していたり、社長の中途半端な態度が原因で従業員の行動に

迷いを生じさせているとすれば、第三の罠に落ちている可能性があります。

 

「ピシッと正しい指示を出したい」と思っているうちにその指示を出すべきタイミング

を失ってしまいます。社長だからこそ間違えても許されるのです、正確にと尻込みして

グズグズするよりも明確にしてもらいたい事を部下に伝えればよく、その後訂正なり修

正をすれば良いという事です。

 

8割正しければGOです。残り2割の正確さを待つ必要はありません。

 

訂正や修正を言う事でプライドが傷ついたとしても、結果がもたらされれば社長の役目

は果たしています。

 

第四の罠「調和を守りたい」

私達は基礎教育を通じて、クラスで仲良くする、友達と仲良くする事を教えられていま

す。ですから、ここはビジネスの場と分かっていても、周囲に反対する立場をとったり

発言するには勇気が必要になります。和を乱す事は本能的に嫌と感じるのです。

 

健全なビジネスには反対意見とのフェアな議論が欠かせませねん。短期的にはまとまっ

たチームワークは働き易い環境を与えますが、中期的にそれで社会変化に対応していける

とは思わないでしょう。一定の範囲で反対意見を抱えることが中期的には健全と思いま

す。

 

そう言う場を作り、討議の時間を確保し議論を管理する勇気は必須であり、そのイベン

トからの逃避行動が第四の罠になります。

第五の罠「弱みを見せたくない」

社長が正直でなければ従業員はそれを嗅ぎ取ってしまいます。いくら社長が責任を取ると

か、従業員を鼓舞しようともそれが本当の姿か本音の気持ちかどうかは見抜かれてしまい

ます。

 

御前試合のように、ここで議論を戦わせろと命じられても、経営者の腰が据わってないの

がわかれば、少しでも政治的な臭いを連想すれば従業員は本心を隠すでしょう。社長が保

身に走れば、従業員も安心・安全を求めます。

 

社長ができない事、不得手なことはそう明らかにして誰かに助けてもらうようにすれば

よく、わからないまま判断できなく事を隠し通そうとしない正直さが必要です。

 

これらの5つの罠は社長でなくても、5人ほどのメンバーを管理するリーダーになれば

誰しもあてはなる事だと思います。

 

詳しく知りたい方は、参考図書「意思決定 5つの誘惑」パトリック・レンシオーニー

 

もしもこれらの罠に陥って身動きが取れなくなった場合

タイヤがぬかるみに嵌り車が動かなくなることは現実にはよくあります。罠に気を取られ

ながらの運転も不自由ですから、そうなった場合の脱出法を知っておくと便利です。

 

例えば、会社の新商品(主体性)と市場(客観性)のバランスの問題。先ほどは客観性を

失うことは罠に落ちたようなものだと申し上げました。しかし、あまりにも客観性を意識

した企画を進めているとどこでもある様な商品開発になってしまいがちです。

 

独自性のあるものをを開発してこそ自社らしい新商品と感じるでしょう。このバランスを

どう取れば良いか?独自性なのか市場性なのか?

 

解決法は色々あると思いますが、私の場合はTOC「クラウド」(そう言う名前の付いた思

考法)を用いて解いて行きます。(以前別記事を参照ください)

 

 

バランスをとるべき事をTOCでは対立を防ぐと言ってます。こちらを立てればあちらが立た

ずとか二律背反とかと同じです。

 

会社の中には5つほどバランスが崩れ易い事(対立を起こし易い)があります。

5つのバランス

1、中期と短期

2、集中と分散

3、全体と個別

4、結果とプロセス

5、社内と市場(この事例の場合)

ですので、これらの課題に対する泥沼からの脱出法を持っておくことは役に立ちます。何より
社長業のストレスが減ります。ww この対立(ジレンマ)対処法は大きなテーマになります
のでまた別の機会にでも。

以上、ご参考まで

ではまた次回

 

 

 

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