52:「知っておきたい3DCADの威力」

こんにちは、いかがお過ごしでしょうか?

 

今日ご紹介する3D CADは、3年前くらいの登場でしょうか?アパレルの方は知っている方も多いとは

思いますが、専門店の方はご存じないと思います。昨今の「デジタル・ディスラプション(古い物を壊

して新しく再生する意味)」の代表的な事例だと思います。

 

かなり前からアバター(化身:仏教用語だったがネットワーク用語になりゲームキャラクターなど自分

の分身の意味に使われる)に服を着せる試みは行われてきたそうですが、ここ数年で一気にリアルにな

り実用のレベルに入ったそうです。PCの能力向上と、特に人間らしいアバター表現の進化が画期的な

進化をもたらしました。(この辺りはハリウッドアニメを見ていると進化はわかると思います)。

 

このソフトで、あれほど難しかったパタンナーの技術がゲームのように簡単になりました。それだけで

あればパタンナーさんのライバルが現れただけですが、組み合わせて使っていくといろんな未来がある

と思います。そのあたりを個人の見解ですが解説させていただきます。

 

ユーチューブ上に「CLO」の解説動画が多く上がってますので、それを参考にさせていただきます。CL

Oの日本代理店はユカ&アルファ社です。デモンストレーション等は東京大阪開催のミシン展などで体験

できます。(私も触らせていただき30分ほどでポロシャツを作りました。)

 

Contents

3Dでパターンを起こす

CADとは

「CAD」の意味は「コンピューター・支援する・デザイン」の略語です。コンピューターを使う物なの

で、歴史としてはWindows 95の1995年ぐらいから本格的になってきて、最近3Dになって来ました。

 

コンピューターもそうですが元は軍事関連や宇宙関係で使われて発展してきており、洋服に使われるの

は他業界よりかなり後になってです。前記したアバター表現の技術と合わさり登場したのは遅かったと

言えるかも知れません。

 

専門店様がパターン作成を見る機会も少ないとは思います。人間の体が厚みを持つ以上、上手にフィット

させるには生地特性と縫製の工程を踏まえつつズレを生まない技術が求められます。服作りのキモですね。

また型紙をうまく詰め込んで生地原価を切り詰める(要尺)努力も必要です。

 

 

3Dの威力

要するに平面図の世界で行ってきた事を、3Dで行ってしまうという物です。百聞は一見にしかずです

のでご覧ください。18分の動画ですが画像のデザインワンピースを仕上げてしまいます。18分は長いと

いう方は画面の右上に「・・・」を縦にしたマークがありますので、そこをクリックして2倍速を選ん

でください。

 

急激な進化、鍵はアバター

アバターがあれば、そこに生地を当て込んでいくだけで作れるのがわかったと思います。それだけに

アバターは重要です。アバターは肌色から全ての体のパーツサイズを変化させることが出来ます。で

すから自社ブランドのオリジナルモデルを作っておけば良いのです。

 

生地データを連携させる

画像のデザインは上半身にドレープを用いています。ファッションは生地による風合いが重要な要素

となりますが、いかにこの情報を反映させるのでしょうか?

 

「生地アナライザー」という装置で生地の特徴を数値化してデーターとして取り込みます。私が聞いた

範囲では、3Dソフトは比較的安価(普及価格の意味もあるし、スクール料金など派生収益もある)、

ただアナライザーは少し高い(取り込みデータが業界で増えれば、気にならない価格になるのでは。。

という説明でした。3年前の情報になります)

 

メンズのスーツなどでは、微妙な感覚が必要になりますが、毛芯などもアナライザーで取り込めるそうで

す。このソフトの特筆すべき点は、生地が足りずシワが寄ったり、サイズが小さく圧力がかかると、その

部分が(色が変わる)正確に表現されることです。

 

動画の最後の部分もタイトスカートの後ろ腰にファスナーを取り付けるのに、どうしてもシワが出る部分

の修正を何度かしていました。

 

運動テスト機能がある

 

もう一つの特徴は「アニメーション機能」があることです。実際の生地データーを入れた3Dサンプル

でアバターが走ったり動いたり出来ますので、スポーツ用品などでは利便性が高いです。スポーツメー

カーの積極採用の意図がわかります。

 

この動画も長い(30分)ですが、オープニングで完成形が歩くシーンがあるので、そこだけでも見て

ください。

 

 

何の役に立つか

単独で考えれば

主に触るのはパタンナーになります。よって反発はあります、使い勝手が。。。などなど。それはCADが入

る時もそうであったように。こういうソフトは今後も進化すること間違いなしなので、ちょうど良いタイミ

ングで各社取り入れたいと思うことでしょう。

 

すでに中国や東南アジアの工場グループが活用しているようです。新聞インタビューでは「もうリアルのサン

プルは作らない」とまで言ってます。今までは日本人のバイヤーが中国の工場を訪れて「どんな物ができる?」

と工場サンプルを見に行ってましたが、今後はデータ送信で済むわけですね。

 

 

単純に考えてサンプル料金は高いです。工場側も良い縫子の時間を取ってサンプルを作ります、手間の割に収益

が上がらない事もあり(オーダーが来るとは限らない)高くなります。またサンプルは何度も作り直します。場

合によっては各色で作ると掛け算で掛かります。年間を通すと百万の単位になるのでメーカーが困っている部分

です。(色サンプルだけ3Dというのもあり)

 

ですのでメリットは断然コストです。

 

流れで考えると

サンプルというのは時間が掛かるのです。サンプルを作っている間に使いたい生地が流れる、ラインが埋まる

ので焦るのですが何ともならない。1月単位で時間は必要です。

 

動画を見て貰えばわかるように「早く」出来ます。サンプルをサイズモデルに着せて修正する必要がない

ので完成度が上がった段階で検討できます。そのサンプルがウオーキングも出来るので言うことなしです。

 

ですのでこの特性を活かせば、「引き付けて生産する」ことの現実味が増します。

 

他のシステムと繋げると

後日紹介したいPLMというシステムと繋ぎますと、見積もりが早く出来ます(要尺がわかり付属も自動計

算の上で、システム上で工場にいくらで縫えるか打診ができる)。パターンを作った人がシステム上で工

場とやり取りするので、生産管理と言われる人の手が空きます(他の手伝いに回る)。

 

流れで考えると「時間」が活用できるのです。トレンドが瞬時に変わったとしてもすぐに対応できるので

す。

 

戦略的に使うと

PLMという仕組みと連携させるとより生きる

PLMもボリュームがあるので別で説明しますが、システムとしてはアナログでしかも分業で行われてきた

企画・生産業務が一つのシステム上で「見える化」されるのです。企画者、パタンナー、工場、納期、コス

トいちいち聞く必要がない。現在進行形で見えるというわけです。

 

システム上で見えるためには、そういうアナログ工程がデジタル情報としてインプットしなければならない

のでこれまでは難しかったのです。でもCAD情報が連携されると(ここはまだ完全ではありません)、一旦

入力された情報は格納され、引っ張り出しやすいアーカイブ情報になります。

 

多国戦略が可能になる

もし自分の会社が大陸に位置しているのであれば、自社ブランドが発展するというのは、国境を越えるのが前

提になります。つまり隣の国も商圏ですから、他民族でも対応していく姿勢があります。同じ素材、同じデザイ

ンだが腰回りが違う、目の色が違うから配色を変えるなどの対応は当たり前です。

 

しかし、作り手側からすると同じデザインであるが、サイズとカラーのSKUが広がります。その度にグレー

ディングパターンを作り替えるのが手間。ここでデジタルの出番になります。

 

海外展開を考える国内メーカーは多いのでしょうが、大陸メーカーではないので、国内勢は多様なリクエスト

に答えるような経験はしていません。今までは多様性を無視して、同品番同サイズのまとめ生産でコストを下

げることが目標でした。

 

5000枚作って3000枚を中国内地で2000枚を日本に、オーダーを合わせることで生産原価を20%に下げる。なん

てことが成功事例として語られてましたが、当然現地ではサイズの要望が出ますが、日本アパレルは原価にだ

け執着するのでサイズ要望は無視していたと聞いてました。

 

同じ話は台湾の代理商からも聞きました、「日本メーカーは国内しか見てない」と。発想が変われば海外展開も

変わるかも知れません。

 

アバターが等身大モデルになる

体型と表情が近ければ自分モデルで着せ替えができる。オーダー物でこれを店頭接客に使っているところがあり

ます。先程のウオーキング動画を大画面で店頭で見ていただく。サイズのやや大きい物、小さい物を着せて歩か

せて窮屈さを見せてシュミレーションした上で発注する。

 

 

その時聞いた印象的なことは「副次的な効果としてはお客様はワクワクする」だそうです。オーダーした商品を

颯爽とアバターが着て動く事に興奮を覚えるそうです。「こういうのを注文した」「もうすぐ届く」と周囲に動

画を見せ、出来上がりを高揚した気分で待つことができると喜んでいるそうです。

 

メーカーからのデジタルデーターを専門店様へと共有することができると、同じような接客が店頭で出来ます。

また個室で、自宅で、遠地で接客を受けたい方にも可能性はあります、インスタライブで活用できるとそれも良い

ですね。

 

オーバーマイヤー法での活用

個人的には一番効果が大きいと思っています。「内見会」でのアバターサンプルの活用です。オーバーマイヤー法

の地味ながら活用効果がわかる方は是非取り組んでいただきたいです。

 

 

また、アバターによる展示会情報としても提供できます。仮想ランウェイを歩かせるファッションショーも出来

るでしょうし。着回しのプレゼンにも効果があると思います。

 

中小メーカーさんが取り入れるのは遅くなるかも知れませんが、中国などの工場では比較的早いのではないかと

思います。コストと時間節約には積極的だからです。いずれ皆様の近くにも登場すると思いますので、その時は

是非積極的に活用してもらいたいと思います。

 

ではまた次回

 

 

 

 

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