73 :「鮮度を上げたら売上げが上がった話」

こんにちは、いかがお過ごしでしょうか?

 

本日のお題目”鮮度を上げたら”とは抽象的な表現ですが、地方アパレル専門店様におきましては

「通常よりも工夫(仕入れ・VP・販促・サービス等)した事がある」というふうにご理解頂け

ればと思います。

 

以前より、鮮度を上げる、鮮度を提供する事が大事と重ねて申し上げてきました。先日、以前の

お得意様よりそのお店なりの「鮮度(仕入れ回転)を上げたら売り上げが向上した」という嬉し

い報告を頂きました。

 

この秋冬、10月・11月の月売り上げが前比130〜140%だったという事です。具体的には現物仕

入れ及び現物予約の頻度を上げられたそうです。

今日のテーマはこの話を取り上げてみたいと思います。ちなみにこちらのお店はキャリア〜ミセス

ですので、そこを念頭においての話しです。メンズの場合は期中企画など無いでしょうから、また

別の機会に取り上げたいと思います。

 

 

Contents

無駄なことはしたくないという考え方

これくらいで良いと決めつけてないか?

これは個人経営のコンビニに行きますとよく見る光景ですが、極限まで在庫を減らしているので

スカスカの棚を見かける事があります。一方で大手チェーンのコンビニは棚が空くなんて事はあり

ません。選ばれた売れ筋がギッシリと詰まってます。(地方のFC経営者が儲かっているか?の問

題は置いておいて)

消費者の視点からすれば鮮度の違いは明白です。何を買うか明確な場合に両者の差はなくとも、

買う物を決めてない場合、ついで買い、衝動買いの差(頻度は落ちましたが)は明らかだと思い

ます。また、次回への来店「この店は頼りになる」という印象も持っていただけるでしょう。

 

もし、地方の商店街で長年商売して来て、「この街の需要はこんなもの」と経営者が決めて掛か

っていては心の底で望んでいる”変化”は起こらないでしょう。

 

例えば10月以降の売り上げはこんなもの、セール前に新商品を入れても販売期間が短いとか、

セール品に惹かれてプロパーには見向きもしないと決めて掛かってしまうとそのチャンスは見

逃す事にならないでしょうか?

 

(アダストリアの会長はローリーズファームの店舗設計の時に「50品番しか置けないけどカッ

コ良く見える店を作ってくれ」と注文して什器の大半を撤去してしまいました。理由は50品番

しか無ければ自ずと店頭に出す商品がヒットランキング50になるから、それを切らさないように

すれば勝てるという理屈だったそうです。

 

在庫が過剰ならそれで良い訳ではないという意味でコンビニの反対事例ですが、そういう鮮度の

付け方もありますね)

 

 

皆、平均値で語ることに慣れている

アパレル業界は2000年までの市場拡大による勝ち戦の習慣がいまだについていると私は思ってい

ます。ですので、魚の大群いわゆるマス層に向けて戦略を立てる習慣から離れられないと感じる事

が度々あります。マス層がいるというのが全ての前提なのです。

 

・トレンド(というマスが作る)波に乗るという習慣

・マス層への広告(雑誌から離れない、SNSを個別でなくマス層に投げかける)

・売れ筋という平均値探し(ヒット分析をして横展開をしない)てQRで売る

 

 

マス層の全てが役に立たなくなって訳ではありませんが、日本人口のピーク期から20年経ち、彼

らは主役ではなくなったと思います。その証明がこのコロナ渦だったのではないですか?未曾有の

大災害でも消費してくれる方々は?頼りになった顧客はマス層ではなかったと思います。

 

 

何度か紹介しています「イノベータ理論」。1962年にイノベーションがどの様に消費者に受け入

れられて行くのかを研究されたものですが、今でも消費者を語る上では有効です。

 

 

新鮮なものには目が無いイノベーター(4Kテレビ、5G携帯など技術が安定してない、しかも

バカ高い時期でも購入)を筆頭に、最も保守的なラガードまで情報への「感度順」に並んでいま

す。

 

イノベータ理論

・イノベータ:2、5% 「新鮮・発明大好き、新製品コレクター」

・アーリーアダプター 13、5%「情報に敏感、トレンド好き、トレンド敏感な自分が好き

・アーリーマジョリティ 34%「マス層でも情報・ブランドを重視」

・レイトマジョリティ  34%「ブランドより価格、安く買う美徳・堅実」

・ラガード 16% 「頑固・保守・手を出さない」

 

 

このイノベータとアーリーアダプター(合計して16% )の数字はコロナ以前のオムニチャネル

(店頭とECの2つの販売チャネルを積極的に利用)層とほぼ同じボリュームです。購入のタイプ

的にはイノベータ理論とほぼ同じと考えて良いと私は思います。

 

 

行動的な自分の思いに忠実なこの層がコロナ下でもお店を支えてくださってるのだと思います。

 

 

対象年齢や、品揃えの方向性などお店毎の違いはあると思いますが、自店顧客における約15%

の顧客層に鮮度提供の工夫をすることはこれから先も重要であると重ねてお伝えしたいと思いま

す。

お金がない人は多いが、お金がある人は確実にいる

コロナで外出しないからアウターはいらないという声があるのは事実でしょうし、納得もします。

しかし外出したい人もいるでしょう。外出の頻度は別にして新作のコートを揃えたい方もいらっし

ゃる。(特に若年層に顕著)

 

 

お金がない人が多いのも事実でしょう、しかし税収もさほど落ちなかった、景況感も踏みとどまっ

てます。壊滅的な業種とそうでもない業種で働いている方が入り混じってる気がします。

 

コロナ再流行の度、都心部は売り上げが6掛けになるのは来店客数の影響ですが、世の中の4割程

度の方が経済的打撃を受けているからではと個人的に考えています。

 

一方で株価は信じられないぐらいの高値です。表に名乗り出て来ませんが、これだけの上昇だと株

成金が沢山誕生してるはずです(百貨店の売り上げがそれほど下がらない)。

 

こういう部分でも「マーブル模様」の様な状況なのでしょう、平均的な人が見当たらない中で両極

の方のコメントがニュース上でも入り混じってます。上記のイノベータ理論に収入のマーブル化現象

を重ね合わせ、(対象顧客年齢と価格帯を考慮した)自店のトップ15%の方への「鮮度」提供が

大事なのだと思います。

 

新作の購入や消費などまるで考えられない人と、手元で確実に資産が増えており、それを賢く使い

たい人の混在です。これらの方を平均で考えるとニーズを見誤りますよという事です。

 

 

買えないという方には気持ちだけでも豊かになって頂いて、どんな時でも鮮度が欲しいという方に

向けてお店作りをしましょう。マスクにチャームを付けたり、マスクむけに目元のメークを派手に

してと顧客は工夫してるのですから、我々も日常を楽しむ姿勢を支えてあげましょう。

決して悲観的に、在庫を絞ったり仕入れの回数を減らす(仕入れの工夫をしない)のは辞めて、その

前に良く考えてみるのをお勧めします。

 

 

マスから顧客に注力する「ランチェスター戦略」

マーケティングは中央値を語る

市場の中央にいて大きく戦略を立てる大企業と、小資本の限られたリソースで頑張る中小企業は

自ずと戦略は違って来ます。

 

大企業は横綱相撲です。余計な小細工はせず自社のネームバリューと信頼感を前面に立て、堂々

と市場シェアを伸ばす事がメインの戦略になります。絞らずに広く勝ちに行きます。

 

一方で、中小企業は大企業と同じ土俵で勝負をしない事が鉄則になります。基本的には勝てる商

圏で勝てる対象顧客層、商材を選び小さくとも連続で勝てる勝負をして行きます。大企業の逆で

絞らないと生き残れません。絞る事で活路を見出します。

これがランチェスター戦略と言われるもので、海外発の研究ですが日本独自に発展させた(特に

九州)、しかも中小企業向けに勝てる方向性を示した考え方です。わかりやすく真似しやすいの

で個店様にぴったりです。

 

ここでお話ししたいのは、大企業と中小企業のイノベータ、アーリーアダプターを同一視しないと

いう事です。イノベータ理論は「情報伝達に対する感度」をベースにしてます。

 

 

ですので、大企業は世の中全般へのトレンド情報、シュプリームやノースフェイスとグッチのコラ

ボ商品など「何処に行けば買えるんだ?」と言った商品提供に応えることが望まれます。一方、中

小企業がそこで勝負しても仕方がないので、そこは自分の「勝てるエリア」ではないと割り切るの

が大事です。

 

 

優先順位としては、ランチェスター戦略による「勝てるエリア(場所・対象・商材)」の選定。そ

のエリア内のニーズをベースとした自店顧客のトップ15%(イノベータ&アーリーアダプター層)

への鮮度提供を務めることです。

 

 

私が知っているお店様では、30代から50歳オーバーの顧客層に対してママさん需要に絞った店

(地元顧客)、逆に50歳以上の新しいおしゃれをテーマに提案を絞ったお店(広域ファンの広

がり)、ともに絞る事で大成功をおさめています。

 

「期待値を高める鮮度提供が仕事」

「毎月新製品がある戦法」の威力

我が家の新年のテレビは「逃げ恥」が娘たちによってガッチリ予約されてます。ww好きな人に

とって放送内容の広告が始まると期待をかき立てられます。番組が始まるまでの期待感は大事で

す。

 

世にあるブランドは期待値で成り立っています。スタバに行けば500円は使うがそれれだけの

満足が得られるという期待値。ディズニーランドで8000円代は私には高すぎますが、払う人は

それだけの満足を期待して行く訳です。

 

 

「期待を裏切られる」(多くの場合、それはサービスで起こります。商品は予想がついているの

範囲ですから品質トラブル以外はあまり起こりません)ブランドにとってリスクではありますが

期待なくして成長はありえない以上このリスクは背負わなければいけません。

 

 

ですので、この期待値を高めるには予告することが効果的になります。朝の連続ドラマは毎朝が

楽しみですが、内容としては15分、ゴールデンのドラマならば毎週で約45分、期待値と提供内

容(ストーリー展開の幅)のバランスです。

 

そういう意味では、アパレル専門店としては月1〜2回(雑貨と洋服などテーマを変えて)、メー

カーであれば月1回の新作発表はトップ15%の顧客には期待を抱かせたいものです。「早く続き

が見たい」と思わせないといけません。

 

 

ただ、注意したいのは「新作が届きました」と届いたものだけを見せているのでは期待値はたい

して上がらないでしょう。同じタイミングで繰り返す。それを期待値を高める告知をすることが

重要だということです。

 

 

連ドラファンは毎朝の同じ時間にチャンネルを合わせます、それが朝のルーティーンになるから

です。期待値を定期的に高めて、顧客の習慣潜り込めばそれは威力抜群の効果を発揮します。

 

 

繰り返しの力=定期配信する

番組宣伝をよく見ると思いますが、いらない情報だとうるさく感じ、好きな情報だと期待感が

高まります。

 

ですのでSNSは「繰り返す」のが重要です。同じ情報を繰り返し違う切り口で見せることです。

料理する方ならダイエット向きの「鳥胸肉」を飽きずに食べれる様にいくつかのレシピを持って

る様に、アレンジの幅を持つことです。それを繰り返す。

 

店のアカウントで全顧客への告知。販売員別のアカウントでは(より顧客の気持ちがわかるわけ

ですから)寄り添った内容に噛み砕いて発信します。これは、販売員のオリジナリティに任せる

べきで会社が口を挟まない方が良いです。

 

これぞD2Cのやり方

定期配信でブランド化と顧客作りを同時に行っているのは「D2C」(店舗を持たずに顧客にダイ

レクト販売)です。店舗を持たないとか在庫を持たないわけではなく心理をついていいるんだと

思います。

 

フレンチレストランに例えれば、三つ星の店として「店」をブランドストーリーにするか、三つ

星のシェフがいる店としてシェフにスポットを当ててブランド化するかで、「ストーリーの編み

方」が違って来ます。

 

定期的な鮮度提供は言ってみれば、このD2Cと同じやり方をしてるとも言えるのです。しかも、

店舗でのリアルサービスとオンラインサービスの両方できるのですからより有利なのです。(

代償としてしんどいですがww)

 

 

より弱っているところから淘汰される

テレビの放送チャンネルは限られており、視聴者減少の中での視聴率の奪い合いです。自分の

番組を伸ばすには他の番組から奪うしかありません。

 

都心でもM&Aや吸収、合併等がこれから行われて行くことでしょう。無くなった会社の売り上

げは有り難く残った会社が頂きます。同じ様に地方においても、自店が昨年を下回れば他のお店

に流れていると考えるのが妥当でしょう。

 

トップ15%のお客様は活発な方々なのですから、買い廻りされています。そういう顧客を独り

占めしようと何でも揃えますよという姿勢ではダメです。それは大企業だからできる戦術と説明

した通りです。

 

絞った勝てるエリア・ゾーンで特徴を出し、それを定期的に鮮度を与える発信をするのが大事な

戦略です。そうして何の努力もしない、昨年と変わらないお店さんの顧客を奪う(お客様が決め

る事ですが)のです。

 

今日の食材を仕入れに行く

仕入れ先との2人3脚の関係なくして鮮度提供はできない

売る方は「まとめて買えば安くなります」と言います、商売ですから。我が家の食材調達もなる

べく購入頻度を上げています。買い物の手間は掛かりますが好みの調理がしやすくなります。

 

 

需要に合わせて仕入れられればそれは便利です。これはプル型(引っ張る)です需要に合わせて

引っ張る。需要を予測するのはプッシュ型という言葉が生産の現場では使われます。プッシュは

予測ですから実際の需要とは差が出ます。足りなければ機会ロス、余れば過剰在庫です。

 

 

これを防ぐには、プッシュ型が適した商材と、プル型に適した商材・メーカーを区別して管理す

るのが良いでしょう。我が家の食材では、米はプッシュ型である程度まとめ調達です。持ち越し

が効きますから、足の速い魚などは当日揃えます。

 

 

しかし、スーパーは近くにあります。仕入れ先の問題はあるでしょう。コロナの影響もあり、多く

のメーカーも地域代理店を復活させる傾向にあるのでこれを利用したいです。

 

 

今までは、展示会の時期を絞り、場所を絞り生産しやすい時期に絞って(売り上げ減少の補填策)

るメーカーが多かったと思います。

 

しかし、専門店様が店頭で回転を効かせた販売手法に変わっていけば、掛け率の交渉よりも鮮度

ある現物企画に興味が移り、その様な毎月新作提示も増えてくるでしょう。その方がお互いの為

だというコミュニケーションが生まれ、インスタライブで双方の協力も生まれると感じています。

 

 

メーカー様が現物をシーズンの奥まで企画して行くにあたり、あてに出来る専門店がどれほどある

かが大事になります。ですので、その姿勢を専門店様は積極的に伝えるべきです。その現物をある

程度支えてあげないと先々の芽を潰します。

 

 

サプライチェーンは二人三脚なのを理解することが重要です。こういう部分で失礼ながら代理店

や営業マンは”感度”の差が激しいので、ぜひ企画の方と直接話をすることをお勧めします。

 

 

少し理想も入っていますし、予算計画の難しさもありますが、今のやり方の展示会では受注は増え

ないと思うので、こういう方向にシフトして行くと思います。

 

(店舗規模の関係で現物だけでは回らないお店もあるかもしれませんが、やり方はあると思いま

す。まず声を出し意思を伝える事、理解の伴うメーカーを探す事だと思います。)

 

 

 

年末ですので、お忙しいとは思いますが体調に注意して頑張ってください。多くのお店の方が

おっしゃる様に「働く女性ストレス・主婦ストレスがある限り需要は不滅」だと思います。

来年も大きく伸ばして行きましょう!

 

ではまた次回

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