64:「ECで5億かっ飛ばしてるメーカーに聞いてきた」

こんにちは、いかがお過ごしでしょうか?

 

ちょうど良いインタビューできたのでまとめてみました。その話をする前にちょっとジョークを一つ。

 

Contents

キャンプ場での出来事

2人の男がテントの外に座っていると大きな熊が恐ろしげな声を出しながら自分たちめがけて突進して

くるのが見えました。

 

すると1人が運動靴の靴紐を締め直しているのをみて、もう一人が言いました。

「お前、気は確かか?あの熊より早く走るなんて無理だぞ!」

すると男が言いました

「熊じゃない、お前より早く走れればいいんだ」

 

これと同じ話を聞く事があります。「みんな潰れてしまえばいい」ってww 現実はよりブラック

ですね。この例え話が使われるのは洋服業界だけではないのですが、個人的に思うのは、小売より

もメーカーさんの発想に近いと感じます。

 

思うのですが、専門店様は消費者と直接やりとりをされているので我慢強いところがあります、とい

うか商売は辛抱強くならざるを得ないからとも言えます。メーカー様も同じ商売なんですが、より思

考は短期ですよね?(独断ですけど)この短期っぽさはどこから来るのか?と思う事がよくあります。

カップヌードルの3分も待てないww

 

海の生き物に例えると、小売店様は海底に縄張りをもっているうつぼや黒鯛、辛抱強く獲物を待ちま

す。一方メーカー様は回遊して獲物を探す、マグロやサメの様な活動量が大きい魚でしょうか?その

違いで何でも性急にコトを図る様に見えるのかも知れません。

 

専門店様の財産が顧客だとしたらストック型、正しい行いをしていれば結果が積もっていくので時間を

かける事が「肯定」出来ます。一方、供給サイドのメーカー様はフロー型、店舗運営の固定費は掛から

ないものの毎年、毎シーズンにヒットを出して行かなくてはいけない(その保証はない)商売のスタイ

ルから来るものかなと思います。

 

えー、ですから言いたい事は、一呼吸おいて考えてから応用してくださいねと言うことです。「考える前

に手っ取り早く試してみればわかる」とおっしゃるメーカーの方をよくお見かけしますが、特にECやS

NSで成功されてる方は”ストック型”だと思います。(私見ですが、今日はその意見を基にしています)

 

少しづつ根気強く試して自分のものにしてる人が多いのではないでしょうか?ですので、闇雲に試し撃ち

して聞いた話ほど結果が出ないとすぐ諦めてしまう、熱が冷めてしまう。これでは新しい販売チャネル

は構築できないと思います。

 

この暖冬で消費不振で災害直下の状況で隣のメーカーが売り上げ倍増!と聞けば誰でも驚きます。花咲

爺さんや舌切り雀の”儲かった話”を隣で聞かされた様なものです。「じゃあ俺も!」と思うでしょう「

どうせなら大きいツヅラをくれ」の気持ちになるでしょう。

 

確かに成功者の話を聞いていると「ラッキー」な話が多いのです。成功者当人は「自分が当たり前に努

力してる事」は言いません、自分達がラッキーと思うことを話してくれます。聞いていて思うのは「普

段の努力=ストック型」なんですね、そこがベースでその上でタイミングや時の流れでチャンスが舞い

降りてるのだと話を聞いていて感じます。

 

成功の話を聞いたりしたりすると、どうしても(面白く伝えようとすると)パズルが完成した最後の1

ピースに焦点が当たるのですが(最後の1ピースこそ成功のキーワードだ!と)、実際はその他のピース

99個が事前に揃っていたことの方が大事だったりします。「せいてはコトを仕損じる」のスタンスで

聞いてください。

 

メーカーさんはとある中堅規模(約10名)、セレクトのOEMや専門店への卸が中心で、自社ブランド

でのEC販売をここ3年ぐらいで始めて急速に売り上げが上がって来ています。他のチャネルに向かう時

は、大概既存チャネルの不調があるのですが、こちらで言えばセレクトむきは段々条件が合わなくなっ

て来た。

 

卸で基本収益を得て、その中のヒット商材をOEM別注で最大化する戦略なので大口先が減ることは事

業の尻すぼみを意味しており多少のリスクは取って行かなければ行けなかった。一方で、セレクト向け

は減少していたのでこのコロナで急減というショックは無かった事が背景にあります。

 

このメーカーさんでストック的な財産は長らくセレクト向け商材を扱っていたと言う事です。つまり商

品力があり、展示会を長らく継続して来た商品開発力がある、また長年の生産における対応力。それと

自社の商品がセレクトの店頭に並んで売れてるのを見てますから、その様な勘所(何がどのくらい需要

があるか)はわかっています。(分かっているキーマンが居る、全員が分かっているわけではない)

 

またECは、大型プラットホームに出店しています。自社サイトはその後の開設になるので、自社サイト

への誘導は思った様な効果は出てないそうです。

きっかけは偶然

知名度の謎

このインタビューに欠陥があるとすれば、初期担当者が退任してる事です。その上司はは売れ始めるの

に特別なきっかけは無かったと言っています。もし、そうなのであれば大型ECプラットフォームに登録

すれば後はお客様が見つけ出してくれるのでしょう。

 

単価はセレクトオリジナルと同等ぐらいですので、それほど安いわけではありません。知名度の観点で

一つ言えるのは20年卸をしているので卸先で購入していただいている、また見知っている方はそこそこ

いるだろうと言うことです。

 

でも疑問も残るので退任者を追って聞き込みしたいと考えてます。

 

ブランディングの必要性

メーカー様が自社ブランドを直接販売していく場合にブランディングによるブランドの確立を考えるわ

けですが、EC発の場合、しかもプラットフォームに登録する場合は「特には」必要としない様です。

ブランドだからそのプラットフォームに採用されたと消費者が好意的に捉えてくれる様です。

 

「スタートは特別なきっかけなしに販売することが出来た」と聞くこのブランドでも、売り上げが大き

くなるに連れて、(関わる人間が増えるに連れて)共通認識である「ブランディング」をする必要性は

出て来たそうです。

 

何より、投入していく在庫がそのまま返ってこない確証が必要になるからです。卸や別注などと比べ在

庫リスクの無い商売しかして来なかったメーカーの場合、「在庫が返ってくる」と言うのはそれは恐ろ

しい事だそうです。

 

価格帯の難易度

こちらのメーカーではワンピースで8000円〜15000円ぐらいです。アウターで2万後半から4万前半。

大型プラットフォームは安い業態も多く、苦戦するのでは無いか?と心配があったそうですが、価格

をネックに感じたことはないとの事。

 

日本で1、2ぐらいの規模になれば、満遍なく価格帯にあった消費者が存在する様です。担当者曰く、

「横並びのメーカーがほどほどあるのが良かった」ともう少し低価格の方が激戦で埋もれていた可能

性があると言ってました。(これも推測ですけど)。

 

既存チャネルとのカニバリ

大型ECサイトに登録することで、既存卸先からのクレームは?と聞いたところ、「卸先からの受注も

同時に伸びているので、返って「ブランド」と消費者に認識してもらったのではないか?」と。

 

販売する側は、限定的に自分の店だけでの販売を望みますが、消費者は現物を見て買うのとECとを使い

分けているのではないか、の様に捉えていました。

 

ここまで聞くととりあえずは、いろいろ考えずにやって見なさいと言う感じですね。

 

苦渋の決断

クーポンの罠

小売の経験者はわかりますが次のステップは「ある程度は売れる。そこから伸びない」と言うことに

なって来ます。そこで出てくるのがクーポンの誘惑です。黛ジュンです(昭和ネタで申し訳ございま

せん)

 

結論から言うと、「クーポンは断った。行って来いだと何をしてるか分からなくなる」と言う方針の

もと、クーポンを(ほぼ)使わずにここまで来れてるそうです。スタートが5年前の比較的落ち着いた

市況ということもあったかも知れませんが、こう言う「戦略的方針」を決めるのは重要です。

 

確かに売れてないメーカー様はクーポンを使っても売れてはいないです。(私の知る限り)

 

「この先、もっと安くなるのではないか?」の様な顧客との駆け引きをせずに「暗黙の約束」に基づ

いたセールをしているそうです(この時期にはこれぐらいのセールをすると言う認識)。こう言った部

分はブランディングに関連すると感想を持ちました。

 

在庫の振り回し

もう一つ、苦労したと言う話は「在庫」です。もともと手元に在庫を持たない商売をしていたところが

売れれば売れただけ、次回投入分のリスクを取っていく構図はタフなものがあったそうです。

 

こちらも、結論としては「まとめて送り込まない」方法を考えたそうです。直近の展示会をベースに(そ

こでの反応が市場テストになります)、素材、工場、物流を勘案して売り上げ目標を決めて行きます。な

るべく追加し易い背景と時期を考えて行くそうです。

 

EC商売を始めて一番困った事が、シーズン末になってECモールから戻ってくる在庫だったそうです。一般

的にどこのECモールも在庫送り込みは歓迎しますが、返送のリクエストには応じられず先方の段取りでま

とまって返送されて来ます。(時すでに遅し)

 

送る量と、追加するタイミングと量、返送を合わせて管理する担当者が必要になって来ます。5億売ると

なると10月で5千万、12月で8千万近く。。出し入れの量には本当に気を使うそうです。中国からエア

ーで飛ばすのだと思いますが、ワザがありそうなのでまた取材しようと思います。

 

視野が広がる、地雷も見えてくる

データーが集まると見えてくる

卸販売やOEMの売り上げでは見えて来なかった事がEC販売では見えて来ます。それは「販売データー」

です。購買年齢もみえますし買い回りも見えて来ます。ですので、売り上げの山を見つけるのはデーター

が積み重なるとアウトラインが掴めるので出品の型を選ぶ苦労はあまりないそうです。

 

以前ですと、作って最終店頭で売れたかどうかの情報はフロー(流れる)だったのが、ECサイトから

フィードバックでストック(財産)へと変化しました。

 

この規模まで売りが上がってくると、サイト側に担当者が付きます。のでより具体的なフィードバック

が得られます。この辺りは百貨店で数字を出すと、先方から担当者が付いて目標を共有したり作戦を練

る「肩を組む感」が出て来るのと同じです、大事にしてくれますww。

 

トレンドが裏に回る地雷

話を聞いていて面白かったのは、「ブランドはヒットするべき時にヒットする」と言う内容です。つまり

トレンドが自ブランドに合っている時期に成功し(そうであれば)トレンドに合わなくなる時期も来ると

言う事です。

 

今ならアメリカンカジュアルは苦戦してますよね、そう言う裏に回った時にどうするかが問題だと言って

ました。もし店なら仕入れで調整できるので、まったく困ることではありませんが、シングルブランドで

数字が大きくなるとその辺りがリスクになって来ます。

 

話を聞いて、それでこのメーカーさんは「複数ブランド」を展開してるんだなと思いました。対応策とし

は姉妹ブランド展開です。

 

(ただこれが成功するかは疑問があります。同じ台所で作った料理は、どうしても似た味がしますし、社

内で比較されていると似てくるものです。親から褒めれれようとする姉妹が似てくる様なもの)

 

ブランディングの地雷

当初スタートは偶然のきっかけから始まったと聞いたのですが、スタートの準備をせずに在庫だけ送りこ

んでいました。その何もしてない段階で気付いたのは「見え方」で売り上げが変わる事だそうです。

 

その辺りから、消費者が選ぶ視点を意識する様になり、ブランドとしての統一感を整え出したそうです。

一番は「見せ方=写真」です。この工夫を最近では力を入れているそうです。写真のクオリティを高め

つつ揃えて行く事をしたそうです。

 

ブランディングのイロハを正面から取り組んだわけではありませんが、結果的にブランディングに含ま

れる要素は個々に判断して行く事になったそうです。(こう言う事に気付くまでの失敗はいくつも重ね

て得た教訓との事)

 

前年売り上げで在庫が膨らむ地雷

分割で生産する場合、納期管理が重要になります。そのためその段取りに合わせた年間の展示会の時期に

なってます。10・1・4・7の基本4回。分割生産ができるのは原料をコントロールしてるからで、かつて

OEMで原料まで遡って手掛けた事が生きてます。(過去のストック)

 

製品在庫は首を締めますが、原料在庫を段階に分けてリスクしてるのだと思います。

 

前に進むしかないけど怖い

勢いは続くのか

インタビューの最初から最後までEC販売は「怖い怖い」と言ってましたので、店頭販売と違って手応え感

はどうしても得難いのでしょう。

 

そこそこの過去の修羅場の経験と持続の実績(強みを知っている)、原料、工場、営業、戦略とプロが集ま

っている(ストック)。コロナでも一切数字は落ちなかったそうで、逆に伸びたとの事ですが、怖さが付き

纏う感がEC販売にはある様です。

 

聞くところによるとここ最近有名になって来たD2Cブランドも身売り話が出ているそうですが、推察する

と継続した物づくりはしんどいのだと思います。どの段階でリスクを取って行くのか組織だった強さが求め

られるのでストック財産である経験と人材が少数精鋭でチームを組めているか?が最大の条件の壁だと思い

ました。

 

 

チームを固める、再投資の連続

最近スタッフを4名増強し数値管理1名の計5名チームにしたそうです。スタッフがモデルも兼ねており、

写真撮影とビジュアル管理、そこがブランディングに肝要だと力を入れてるそうです。

 

ジグソーパズルの最後の1ピースは「カメラマン」です。大事なことは金を使った方が良いと社内撮影から

外注に切り替えて手応えがあったと言ってました。

 

外部セミナーでナノユニバースの話を聞いた時に、カメラマンを6〜8名用意してそれぞれの撮影ブックを

作るそうです。そのカメラマンが得意な画像(物撮り、外撮り、モノクローム、外光など)を決めておい

て、必要な画のイメージから逆算してカメラマンを選択すると聞いた事があります。

 

ほとんど雑誌のグラビア撮影と同じレベルだと思いましたが、(費用と時間の許す限り)その方向へ近づ

けるのは成功の条件なのかなと思いました。

 

まとめると

*自社の強み(ストック)を活かす

*後追いでもブランディングの要件を満たして行く :価格、対象ペルソナ、販売戦略、イメージ

*ビジュアル品質と在庫に競争力を持つよう努力する

*前に進む勇気を持つ、ただし蛮勇ではない(笑)

 

ではまた次回

 

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