こんにちは、いかがお過ごしでしょうか?
皆様の会社ではDXを取り入れられているでしょうか?ディーエックスは
デジタルエクスチェンジの略語です。最近よく聞きませんか?
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DX(デジタル(ビジネス)エクスチェンジ)
2018年に経済産業省が公表した定義には、「企業がビジネス環境の激しい変
化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、
製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組
織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
とあります。
定義が広いので、基幹システムに大型投資をしてもDX、流行りのPLMとか、
ECなどもDXですね。
昔のIT投資にはなかったAIやサブスクリプション(定額制)が目新しいとこ
ろです。RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)の様にパソコン
上の作業は自動で行ってくれたりします。
音声認識にAIが加わり、チャットロボットが消費者からの問い合わせに自動
対応してくれたりします。そう言う機能をフル活用して金融や保険の業界で
大量に配置転換(行き先は知りませんが。。)を行なったりしています。
その様な動きが人減らしに見えるので、DXと聞くと人の削減と自分などは
連想してしまいます。
今日はなんのためにDX投資をするのか?と言うテーマですが、結論を先に言う
と、「何のためにシステムやソフトを入れるのかを目的と優先順位をはっきり
させてないといけない」と言う事です。
人が減れば良いのかと言うと、売り上げや利益が下がっている局面での人減ら
しは単なるリストラです。売り上げや利益が上がる状況でなおかつ人手が要ら
ないとなれば生産性も向上する理想的な展開になります。
同じフレーズでもその使用場面で意味合いが少し違ってきます。ですので、デ
ジタル技術を用いる場合でもその目的、前提をならしておく必要があるのです。
今回は、参考までにそのチェツクポイントをまとめてみました。
経費削減・在庫低減・生産性UP
そもそも何を狙うのか
会社の目標を考える場合に、代表的な項目は経費・在庫・生産性(言い換えて
現金の増加)があります。
このどれに着目していくかで違いが出てきます。私の学んだTOCの答えを先に
申し上げますと。
注)TOC(制約条件の理論)イスラエル人物理学者ゴールドラット博士が友人の
工場経営者に頼まれて生み出した理論。トヨタのJITをモデルにした経営管理手
法。トヨタが物作りの現場発想であるのに対して、他業界でも使えるモデルに
改良した。
1、利益の拡大
2、在庫低減
3、経費を維持する
理由は、経費と在庫の削減は有益ですが減らすには限界があります、最低限の経
費と在庫は必要だからです。一方、利益の増加に上限はありません。となればこ
れを第一に狙うべきだと言う考え方です。
経費を下げずに「維持する」となっているのは、経費の削減で利益創出プロセス
のリズムが狂うからです。削るよりもあくまで利益創出に注力する考え方です。
私も正論とは思いますが、私がキャリアで経験した優先順位は違いました。大概
の現場で優先されているのは伝統的な優先順位でした。
伝統的なマネジメントの優先順位は
1、経費を下げる
2、在庫を下げる
3、利益を上げる
1、在庫を下げる
2、利益を上げる
3、経費を下げる
肝心なのは、経費削減が在庫削減や利益増大を邪魔しない様な優先順位になってい
るのです。経費削減が最優先になると、勝てる勝負や仕掛けも成立しなくなるから
です。
こうやって3つの優先順位を眺めてみると違いが分かるかと思います。これが単
にシステムを入れるにしても何の為か、その目的と優先順位を考える必要がある
と言う意味です。
個別最適では仕方がない
従業員は自分の部署しか見えていない
会社はいろんな業務が組み合わさっています。生産、販売、経理、物流など部門
に分かれています。
伝票の山に喘ぐ経理部門は、何とかしたい。そもそも伝票を発行している仕入れ
部門も発行を簡略化したい、その伝票が流れていく途中の押印をスムーズにした
い。伝票が倉庫に届くと現物と照合しますがここでも手間が発生します。
お金や物が内部、外部を伝わって流れていきますが、この流れの全体像を掴んで
いないと部門ごとの局所的な改造をしてしまうことがあります。
システムを入れて自分の机の上は綺麗になったけど、その書類が届いた隣の机は
ひどい事になったりします。
仕事の流れには1番脆弱な部分は必ず出てきます。ビンの口が細くなっているの
に例えてボトルネックとも言います。ボトルネックでは仕事が詰まるのです。
全体最適を目指す場合は個別最適をしてしまいボトルネックを痛めつけしまわ
ない様にしなければいけないのです。TOCではボトルネック保護の発想がありま
す。(全体の成果を優先するのがTOCの考え方だからです)
簡単にいうと、ボトルネックの工程がこなせる量だけ途切れなく渡し、その工程
に十分なバッファーを与えます。そういう保護です。ボトルネックが保護されて
いれば全体の成果量は最大化することが出来ます。
保護するとは、例えば、陸上のリレーを4人で走るとした時に、第三走者が弱い
とした場合、二走とアンカーの距離を長くして三走の負担を軽くするなどです。
(社内でそんな協力関係はあるでしょうか?文句は出ませんか?)
評価が個別最適に向かわせる
仕入れ部門がまとめ生産でコスト削減を狙い、物流部門も同じく分の目標がコス
ト削減で荷受けフロアー面積を縮小させたとします。それぞれコスト削減を目標
に掲げ上司の指示に忠実です、しかし事前に双方の話し合いをしなかったとしま
す。
想像するのは難しくありませんが、商品着荷当日は大混乱です。そもそも当月売
る分だけ捌くつもりの限られたスペースに何か月分もの大量入荷が来るのです。
荷下ろしのスペースも無くトラックが延々と荷下ろし渋滞し、荷捌きの玉突きで
倉庫の他の業務もダウンし店頭への配送は大きく遅れるでしょう。
店頭は1品番で構成されるわけではないので、同時に多数の入荷もあるのです。
結果、それぞれの部署は自分の目標は達成と主張すると思います。彼らはコスト
削減に忠実だったのです。
結果、店頭配布が遅れて売り上げが下がった事は視野に入って来ません。責任は
販売部門のせいになり、全体の売り上げが下がっているにも関わらず自分たちの
評価を正当にして欲しいと言うでしょう。
細分化された現場は見えている範囲が狭く、評価目標に忠実だと言う事です。
おかしな話ですが、人は評価に従うものです。ただ数値目標が入れたいと、部分
最適な数値目標を入れてしまうとこの様な事態に至る場合があります。
こう言う点を考えても、自動化や人が介在しないオートマチックな業務はスピー
ドの魅力がありますが、サプライチェーンの様な繋がりの中ではコントロールさ
れたスピード(ボトルネックを壊さない)でなければ結果に結びつかないのです。
部分最適のためにその部署の目標のためだけにデジタル技術を用い様としていな
いか確かめる必要があります。(現場は現場を考えた発想をする事を咎めないま
でも、役員以上はプロセスで優先を確認する役割を持つべきです)
次に考えておきたいののは、人を減らすことの功罪です。人減らしが最も素晴らし
い経営管理手法なのでしょうか?
人の減らし方
多能工の考え方
トヨタがアメリカの自動車産業から学んだ中に、「多能工」と言う働き方がありま
す。アメリカを代表する自動車メーカーのフォードでは(初代の教えを棄てて)ま
とめ生産へと舵を切りました。
トヨタはその現場を見に行き、日本ではあんなに同じ物を消費する市場がないと考
え、少量多品種生産を模索しました。その中で見出された多能工とはいくつかの工
程を同じ人間が行う事です。ハンダ付、ネジ締め、など幾つもの作業を同じ人間で
行うのです。
アメリカの自動車工場ではユニオンの影響で多能工的働き方は禁止されており、そう
いう意味でも日本メーカーの生産性に勝てない時代があったそうです。
現在では、星野リゾートなどは多能工を積極的に取り入れ、一人の社員でフロント、
客室、調理補助など4カ所ほど担当するそうです。それぞれの部署で繁忙に合わせて
スライドさせて行くのです。
ですので、「人が多い、余剰」と考える前にチームワークで行える事はないかと言う
のが解決のヒントになって来ます。チームで生産性を上げることを考え、例えば3人
で5つの業務の生産性を上げるとすると、その解決手段として多能工が出てくるので
す。
サウスウエスト航空は弱小規模ながら人気と実績が高い企業ですが、この会社は飛行
機が着陸して再び離陸するのに「15分ターン」と言う目標を掲げています。理由は、
飛行機は飛んでいない時間は収益をもたらさないので飛行場にいる時間を最短化させ
る事が利益を最大化すると言う考えです。
また対象顧客が近距離移動のビジネスマン需要で、彼らは待たされるのが嫌いなので
す。その要望にに合わせた戦術だからです。待たせない事は競合対策にもなります。
この要望にチームで取り組んでいるので、機長も着陸後は機内清掃に加わります。ま
さしく多能工です。(アメリカの機長のプライド精神を顧客奉仕へと変換させたのは
並大抵ではなかった)
この様な人の使い方には工夫の余地があると言うことも考慮されておらず、単に人を
減らせば良い、人を減らせるソフトやITは良いシステムだと思わない様にすべきです。
とは言え、多くの経営者は短期的に成果の出る人減らしを選ぶでしょうから、従業員
は逃げるしかないですね。
そもそも、この様なチーム多能工組織で人を雇用すれば余る事は無いと言えます。
0、5人ずつの見える化
もともと小さな会社では、チーム運営は当たり前ですから誰かがやる、手の空いて
る人がやるのが当たり前です。
ただ、微妙に人が増え5人を超えてくると、阿吽の呼吸でもミスが出る様になります
。仕事の受け渡しが増え「やってくれると思った」の様なポカやお見合いでのミスが
出て来ます。
そう言う場合も、一度仕事の棚卸しをして、0、5人分単位でどれだけの業務がある
のかカウントする事をお勧めします。
チーム作業が前提だとしても、個人間への偏りや責任の曖昧さは別の問題を引き起こ
すので注意すべきです。
この様な棚卸しを一定の間隔で行えば、システム投資の前提は出来てますから、投資
がもたらす効果をシュミレーションし易くなります。
得意を伸ばす
何にせよ、人の使い方は難しいです。平均的な人も居ないし、社内で経験値もバラつ
いてますから、1名でどの程度の業務量というのも計算しにくいからです。
多能工や兼務を行うにしても、欠点を前提に作業割すると必要人数は増えてしまいま
す。その人の欠点よりも長所を伸ばしてあげる考え方でチーム編成した方が良いと思
います。
見える化が出来ているところはDX効果が出る
見える化が原点
いくつかの視点を挙げさせていただきました
・そもそも何のためにやるのか?
・優先順位は何か?
・個別最適に陥ってないか?
・評価指標は適切か?
これらを指差し確認して、DXプロジェクト発車オーライです。
ただのシステム投資のつもりが、上記ポイントを検討してみると色々と辻褄が合わ
なくなり、会社のビジョンから見直す。。なんて事になる場合もあるかもしれませ
ん。それはそれで中長期的には良いのではないでしょうか。
会社のビジョンから、戦略の穴埋め、方向性の修正、それらが各部門への行動目標
に落とされ、個人の目標へと連携します。正しい行動で評価され、会社全体へ効果
が確認されるのが大事です。上下関係の整合性と言えます。
また、業務プロセスやサプライチェーンの様な繋がりを見る場合は、左右の横の連
携です。原料から生産、販売、財務までの流れで全体最適が図られなければ行けま
せん。その際に、どこがボトルネックなのかどこが弱点かを理解しながら、全体の
高速化(換金のスピード化)を求めるわけです。
これらを考えるときには、まずは「見える化」が大事になります。広範囲の人が理
解できる様に見える化を普段から行う事が全ての行動の基になると思います。
守るも攻めるも
このご時世、苦しいところは全てのインフラが陳腐化してどこから手を付ければい
いのかわからないぐらいに苦しい。
逆に良いところは少ないコストで便利なデジタルインフラが使い放題で、それらを
使えば面白い様に成果が出る。全くオペラ天国と地獄の様であります。
いろんな場面にあるであろう”その会社”の状況を理解し得るのはそこに在籍してる
人達だけです。溺れる時は何にでもすがり付きたくはなりますが、安易な期待でDX
に飛びついても残された最後の体力を失うだけかもしれません。
今日は、老婆心ながらデジタル投資のその前に。。と言う注意点をまとめて見まし
た。ではまた次回