こんにちは、いかがお過ごしでしょうか?

 

商売の話を「書く」のは難しいです。書いていてそう思います。

 

商売は「ある商品」について書くにしても、商売の背景もあれば、その商品の価格、販売方法

などなど色々関係するので、書いている方のイメージと読み手の前提が噛み合わないことがある

と思うからです。

 

つまり「前提」が大事になるということですが、できれば皆さんとその辺り目線にあまり差がない

ように期待します、また今回もそうであるよう努力します。理想は、書くより喋る方が情報量は多

くなると思うので、いずれその悩みはユーチューブで解決できればいいですがww。

 

サイトの上に「お問い合わせ」のタグを用意しますので、ご質問やご意見はそちらにお願いします。

前回、前々回も「在庫」について書いてますが、視点は中小企業に置いてるつもりです。在庫の”概

念”の説明についてはどうしても扱う事例が大きくなります、応用しずらい話になりますがご容赦く

ださい。

 

 

今日はまず、前回までのおさらいを含め、生産(仕入れ)コントロールの歴史から

SPAが生まれた時代とは環境が変わった

洋服業界で戦略的生産コントロールと言えるのはSPAが最初だと思います。

SPA「スペシャリティストア・リテイラー・オブ・プライベートレーベル・アパレル」

SPAという名で専門店がオリジナルレーベルを開発したのはGAP(69年創業)が先駆けで、時代は

80年代。当時デニム生地の糸から企画・製品化まで2年も時間がかかっていた(水平分業の弊害)

のを自社をチェーン店化して発注量を増やし「一定量の責任」という考えを持ち込み2ヶ月のターム

(在庫日数49日)にすることに成功しました。(SPAの呼称は86年にGAP社が世に提唱)

その手法と同じくベネトン(65年創業)が「半完成品」として糸を用意し、需要に合わせて後染め

する(ただし製品デザインはクルーネックなどの定番に絞り、色数で鮮度を付ける)手法でヒット

しました。(参照:ビジネスモデル全史 三谷宏治著)

 

その後90年代に入りワールド社が「sparcs構想」の下に調達を週次発注納期4日(在庫日数22

日)まで精度を高めSPAの完成形を確立しました。(参照:事業システムの戦略 井上達彦、加護

野忠男著などその他)このアイデアのきっかけは80年代後半セブンイレブンの「ロスに関する記

」から啓発されたものだそうです。こうしSPAは日本で完成されたのです。後述するトヨタのプル

型生産を完成させたのでした。

リードタイム短縮が進化してジャストインタイムへ

リーバイスなどの専業メーカーがかって2年ものリードタイムで生産していたのは信じられません

が、アメリカ企業の多くは80年代までは「大量生産」「まとめ生産」をするのが当たり前でした。

今ではサプライチェーンの名の下の生産工程は垂直統合されていますが、GAP登場前ののアパレル業

界は糸、染色、紡績、編み立てとそれぞれの工程がそれぞれの思惑でまとめ生産をしており、それぞ

れの受け渡しの工程で無駄な待ち時間が発生しあっという間に1年ぐらいかかるのは明白でした。

誰が注文するのかわからない状況では進んで各工程が在庫を持とうとはしなかったのです。SPAは買

い手が先頭で掛け声とともにリードするから一定のリズムでサプライチェーンがムカデ競争のように

機能するのです。

 

 

結局、GAP以前のアパレル業界は(消費者を意識するまで)素早く届ける価値に気づかなかったと言

えます。そしてそれに早く気づいていたのは専門店だったということですね。

 

このように80年代くらいから自動車生産を筆頭に”まとめ生産”の弊害により米国企業は競争力を失

い、代わりに世界の中心へと名乗り出たのは「トヨタ生産方式」です。まとめて生産しても需要はあ

ると考える米国式に対し、トヨタは「日本にそんな大量の需要はない」と自動車製造に取り組み始め

た時から多品種少量生産を方針に掲げていました。

 

しかもジャストインタイムを合言葉にしたのは「お客の元に届ければ現金に変わるが、在庫ではお金

寝てしまう」、それならお客の欲しいものを必要なだけだけ作ろうという発想が最初(1953

年)からあったからです。

 

トヨタ生産方式は、後工程(需要)が優先します。後工程からリクエストがあってから前工程は作業

にかかります、発案者の大野耐一さんはアメリカのスーパーマーケットでその仕組みを思いつきま

す。棚から消費者が商品を手にしてカートに入れると、バックヤードからスタッフが商品を在庫から

棚に補充します、消費者(後工程)が動いてからスタッフ(前工程)が動くこれを「プル方式」と

言います。

 

 

例えば、立ち食い蕎麦屋はオーダーが先で、そこから茹でますね、前工程は麺を冷凍庫から出して解

凍することです。オーダーが来るだろうと見込みで解凍しない、オーダーが先ということです。

作る方はめんどくさい、まとめてやりたい、それを現場を説き伏せ30年かけてプル生産を確立させ

たのがトヨタの歴史です。これが基本中の基本です、トヨタを知らなければ生産はもとより社内の改

善はできない(遠回りになるだけ)と思います。

 

(バイキングレストラン、見込み生産とプル型補充の組み合わせ)

 

80年代のアバウトな時代には許された見込み生産は、東西冷戦後のグローバル時代の競争激化時代

なると一気に通用しなくなり需要に合わせて生産ラインをシンクロナイズド(同期化)させることが

当たり前となりました。そういう意味で、現在のアパレル業界はまとめ生産の生き残り、ジュラシッ

クパーク並みです。

 

ZARA社登場

ZARAは75年に創業してます、2000年当時で世界で1000店舗を超えて今尚成長しています。ZARA

の特徴は「GAP型の予測大量オーダー」をしない事です。ワールド社と同じプル型の思想なのですが

「流行を先読みする力には頼らない」「情報発信(CM)をしない」と言っているところが違います。

 

会社のスタートが工場で、ある日大量オーダーのキャンセルが出てしまい、その販売に苦労した経験

から店舗販売を始め(自前の在庫処分インフラを持つ)、上記の大量生産をしないという信念を持っ

たそうです。何か洗練された戦略と言うよりはドロドロの怨念にみたいなものを感じますが。。。w

 

ZARAは90年代に自社工場などインフラを整えると時に、会社総出で日本に来日しトヨタを見学し

たそうです(聞いた話)。皆んなでトヨタを学ぼうというトップの姿勢。ですのでザラは随所にトヨ

タ方式やその進化系のアイデアが入っているようです。(ZARAの 情報は非公開なので、初期の頃の

調査レポート以外に資料がなく、最近のことは全て推測になります。)

 

ワールド社のプル型との違いは、同じ品番での追加をしない事です。店頭投入1週間で死に筋排除

し、売れ筋も4週間で排除します(売り切ります)。それゆえ顧客は「今買わないと次は見つから

ない」ので顧客年間来店頻度は17回、つまり3週間に一度です。

 

ではそれを実現するには、さぞ商品企画チームは大変だと思うのですが、スケッチデザインは従来

4ヶ月だったのを4日に、サンプル作成に2ヶ月だったのを4時間に縮めました。GAPの新作リード

タイムが9ヶ月だったのに対し2週間で行なっているそうです(2000年当時のレポートによるが、

企画人数とかの情報はわからない)。

 

全てオリジナルで作るとなると、このぐらいすごい話になるのですが、皆様のように専門店の

立場で仕入れるのであれば、メーカーを多数回ればZARAと同じことは出来ますね。

 

2000年以降のモデルはZARAだが、基本はトヨタ

ここまで80年代から2000年にかけての生産調達の変遷をまとめたのですが、この時期は変数と

して付け加えるべき環境変化があと2つあります。

1、人口が増加から減少へと転換した

2、一過性と思われた「デフレ経済」が定着した(100年デフレ)

(3つ目の要素として付け加えるなら2010年以降の3、ファッションの優先順位の低下

 

 

デフレですので安いもののニーズが高まった時期でもあります。大手ブランドもレギュラーラインに

加え”セカンドライン”や”アウトレット”販売で利益を取る”総合戦略”の時代でもあります。ですので

一概にこのやり方が正しいそのやり方は邪道だという言い切りは出来ません、現物は在庫が出るので

中古販売で手数料だけいただこうという発想も今後はあるでしょう。

 

しかし、それでは身も蓋もないので私なりにまとめると

1、80年代から00年代は「機会ロス撲滅」が主要なテーマだった。なにせ人口が伸びていた。

2、機会ロス撲滅のために「リードタイムの短縮」が必要だった、そのためにSPAが貢献した。

 クイックレスポンスはその象徴であったが、しかし単なるコピー手法は同時に同質化を招いた。

 

3、同質化は値段競争へと直結し、原価への執着がデフレ経済の後押しもあり海外勢の侵攻で

 肯定されブームになったがやがて消費者に本質的な価値の低下を見抜かれ、値引きとクーポン

 で表面的な駆け引きの結果見向きされなくなり、報いを受けて業界はダークサイドへ落ちるこ

 ととなる。

 

4、2005年以降のSNS浸透により、コミュニケーションの価値が加速的に向上し、個人の頭

 の中「インサイト」へと興味が移り、それぞれがどんな生き方(どんな食事、どんな家、ど

 んな思考)をしようとしているかに関心が移っている。相対的に人の外見、外見から推測さ

 れるアイデンティティへの関心が低下している(ノームコア:Tシャツだけでいい)。

 

(服が無視されるわけではないが主役ではない、主役の一人というところか。。下に貼り付けた

この番組は人気ですが、5人のゲイが世間に取り残されたと感じている応募者を変身させるのです

が、外見と”中身”の変化を同等に大事にしているところがミソだと思います。)

5、これらのジレンマを解消するのと言われるのはザラの少量多品番連続投入方式。デザインを

 ヒットの属性へと調整修正していく。

 

昔、台湾の人に聞いた話ですが、「日本のブランドとスペインのブランド(MANGO)のフランチ

ャイズをしているが、日本のブランドは地元のニーズを伝えても何も対応してくれないのに対して

、スペインはサイズでも色でもすぐに聞き入れてくれる。つまりは、大陸型のビジネスは国境を超

えていくのが前提(つまり柔軟性)に比べ島国の発想は自国内のニーズしか見ていない。」

 

と言うものでした、ですのでZARAの期中対応フレキスブルは凄いと言っても、それは島国から見た

評価かもしれません。ZARA勝算は過剰評価なのかな?と言う意見があることも付け加えておきま

す。

 

ZARAのプル型はヒット特性のプル

前述の内容だけ見ればZARAは大量の新規品番を(少量)投入していくプッシュ型に見えるかもしれ

ません。実際は期中生産の割合が大きいのが特徴です。6割以上期中生産するのはよほど腕に自信が

ないとできません。

 

しかしZARAが4時間でサンプルを作れる(専門工場がある)能力があれば、それほど前から準備す

る必要はないわけです、瞬時に加速できるロケットな訳ですから。

生産関係者はご存じの通り、服の生産で時間がかかるのは生地です。ZARAは生地でなく糸から注文

しているのは有名な話で、同じ糸から染色や紡績編みの変化で多様な品番に用いるそうです。生地は

先行して準備しておりデザインはギリギリで行う。原料の持ち方は我々に馴染みの「箱根そば」と同

じです、言って見れば粉の段階で原料を持っていて、数種類の麺屋やお好み焼き等の材料に加工する

イメージですかね。

 

私も90年代にアパレル企業にいた当時、デザイナーを2組に分けカエルの歌の輪唱のように、少し

ずらしてトレンド情報(コレクション情報と市場情報)の組み合わせを変えて生産していた時代が

ありました。初期計画と期中追加の組み合わせはそれほど新しい考え方という訳ではないのですが

、ZARAの場合は期中企画に対するヒット商品分析が凄いと聞いています。期中企画のデザイナーに

そのようなナビゲーターが付いているわけですね。

 

一般に、初期計画が7〜8割というのが普通だと思います。皆様専門店も期中の現物で売り上げの8

割を拾うなんて怖くて出来ないと思いますが、それをZARAはやっているわけです(伝聞ですが)。

そりゃ凄い!

 

 

例えば無地と柄のロングプリーツスカートがヒットしたと仮定すると、ヒットの要因分析をする。

うれた理由は丈なのかプリーツなのか柄なのか、丈と柄がヒット要因ならプリーツにする必要はな

く、同じ丈で柄違いを投入していく。つまり90年代はズバリの商品の限りなく類似のクイックレス

ポンスだったが、ザラ型はヒット要因属性に集約させていく。

 

例えて言えば立ち上がりに投入したメロンパンが売れたなら、ナッツ入りメロンパンチョコチップ

メロンパンがその後投入されていく、それぞれ売切れる奥行きしかない。単品としては売り切れて

いるし機会ロスかもしれないが属性(クッキー生地を乗せた菓子パン)としては回転が効いており

、鮮度や競争力も伴う。

11月のセール目前でも新作メロンパンの抹茶クリームはプロパーで消化する可能性が高い。

プロパー消化というところが大事ですね、そのためにヒット分析に力点を置いているようです。

 

 

服の優先順位が社会的に落ちた2010年代でも熱烈なファッション消費者は存在しています。なかな

か買わない消費者より、より積極的な顧客にネットと店舗の両方からアプローチしていくのがオム

ニチャネルの考え方ですが、その熱心な顧客に繰り返し買っていただくにはそのものズバリの追加

よりもザラ型の方が向いています。

 

ということで、現在の勝ち組とされるZARAの中にはプル生産思考と、ヒット品番分析の仕掛けが

含まれているという話をさせていただきました。このような柔軟な組織は、我々島国の視野の狭さ

では理解しえ無いのかもしれませんが、この柔軟性を避けてはこの業界の生き残りはないのでは無

いかと思います。

 

生産(調達)方針と在庫補充方針の二つを持とう

大きい企業は柔軟性に悩むところですが、中小企業は変わり身の早さで生きているわけですから皆

様は十分に地方のZARAとして存続していけると思います。

 

今日提言したいことは「在庫補充方針」です。これを専門店であれば持ちたいですね。

メーカーの立場であれば、小売店の在庫補充方針を理解し、その上で連動したいところです。

 

専門店への方へのアドバイスは

1、仕入れメーカーの特徴を知ろう

原料に強みがあるアイテムがあるか?同じ価格でも面の差別化につながります

原料を持っているのか?それを活かすような追加企画に積極的か?

ヒット分析をしているか?店頭情報の収集に日頃から積極的か?

 

2、取引メーカー数を増やしてみる

各メーカーのトップ20%から選ぶ

1型少量を売り切っていく、繰り返しヒット品番を探して仕入れる

違うメーカーには違う情報がある

3、取引メーカーの強みを分ける

立ち上がりと期中に頼りになる特性を区分する、そして期中の仕入れウエイトを上げていく

特に期中メーカーとの信頼関係を構築する

 

4、ペルソナを確認する

顧客年齢とニーズを設定し、そこに絞る(強みをはっきりさせる)

ペルソナが求めているニーズをメーカーにはっきり伝える

これがないとメーカーを増やしてもマトがしぼれなく、ばらつく

5、ヒット分析をする

顧客と話せばペルソナに確度が出てニーズがはっきりしてくる

売れた商品のどこを気に入ってもらえたのかの分析を日常的に行う

頭の中だけでなく必ず紙に書いて、スタッフと共有する

紙に書き出すことで客観視できる、新たな発見も出る、意見も出しやすい

期中追加はヒット属性の回転を狙う

 

6、ヒット分析をメーカーと共有する

仕入先とは同じムカデ競争のチームメンバーです

あなたが仕入れるには誰かが現物を用意する必要があります

信頼できるメーカーとサプライチェーンの協力体制をとることが大事です

情報はまず与えましょう、そうすれば返ってきます

顧客ペルソナとヒット分析を店スタッフ全員で共通認識すれば、メーカー構成を活かせます

のでそれぞれのメーカーの強みを活かしつつ関係性を高めていくことが大事だと思います。

店頭情報を仕入れ掛け率を値切ることに駆け引き材料として使うよりも、関係性を構築しプ

ロパー消化回転率を高めることが最も大事です

 

今回も6000文字になってしまいました。次回は、店頭で在庫を持つ人の心理状態について書く

予定です。

ではまた次回

 

 

 

 

 

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